第5回(前編)日本製紙連合会 技術環境部 専任調査役 池田直樹氏/株式会社日本製紙グループ本社 技術研究開発本部 エネルギー事業部長 野村治陽氏

製紙業界の循環型社会と創エネへの貢献。電力自由化に向けた動きも加速


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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「みなし節電」と「自己託送」による電力融通

――グループ会社間の電力の融通もしていますか?

野村:「みなし節電」には、日本製紙グループとして取り組んでいます。具体的には、今年の夏場に節電要請が出たエリアは、九州・四国と関西電力の3か所でした。四国電力と関西電力のエリアに私どもの事業所がありますが、ここは自家発を持っていません。本当に節電するには生産を下げるしかありません。しかし、このエリアの事業所は夏に製品が売れる工場が多い。操業を止めるか減らすことは基本的にはやりたくないが、世の中の要請だからやらなくてはなりません。

 そんな中、発電所を持っている別のエリアから節電要請されているエリアに電力を送り、その分を節電したこととみなすというスキームが昨年11月に経済産業省資源エネルギー庁から提示されました。今回弊社は、そのスキームを使わせて頂きました。

――みなし節電は緊急の対応で、普段はやっていないのですか?

野村:普段はやりません。グループ会社間という意味では今回が初めてです。しかし、北海道エリアではそれぞれの工場が発電所の定期検査のときには「自己託送」はやっています。

池田:「みなし」と「自己託送」が、基本的に違うのは、「みなし」は電力会社間をまたげます。九州から関西に送るのに、中国電力を経由して送っても「みなし」だと見てくれますが、「自己託送」というやり方は一つの電力会社の中ではないとできません。九州から北海道まで送れる「みなし」の方がはるかに扱いやすい。

野村:「自己託送」の場合は会社が同一でないといけませんが、「みなし」の場合は会社が違ってもかまいません。グループ会社間での電力融通ができます。

池田:更に「みなし」の場合は自由ですが、「自己託送」の場合は電圧種別が同じでないと駄目だったと思います。「みなし」のほうが自由度は高い。

――電力不足の懸念があるうちは、夏や冬のしのぎ方は業界として相当悩ましいですか?

池田:今のところ、北海道だけは厳しい状況です。北海道と本州の間の融通できる電力の量が決まってしまっているので。いくらこちらが送りたくても、融通できる容量を超えてしまったら北海道に送れません。北本連携が60万kWしか送れないからです。九州と関西の間は、大きな送電線系統が2系統走っていて、かなりの量の融通が利きます。3.11以後もそうでしたが、東京電力で電力が足りない分を中部電力から送ろうと思ってもある量以上は送れない。50サイクルと60サイクルの周波数を変換する能力が不足しています。北海道も同様に海底ケーブルの容量が決まってしまっていることから、今年の冬も北海道は相当厳しいと思われます。

(後編に続く)

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