第5回(前編)日本製紙連合会 技術環境部 専任調査役 池田直樹氏/株式会社日本製紙グループ本社 技術研究開発本部 エネルギー事業部長 野村治陽氏

製紙業界の循環型社会と創エネへの貢献。電力自由化に向けた動きも加速


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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新エネボイラーで温暖化対策とコスト削減を図る

――日本製紙のエネルギー消費の推移は、業界の流れとほとんど同じでしょうか?

野村治陽氏(以下敬称略):流れ的には、そうです。オイルショック当時の対応策として、微粉炭ボイラーを設置しました。釧路工場・石巻工場・岩沼工場・八代工場・江津工場に微粉炭ボイラーが入っています。その後バイオマスボイラーや新エネボイラーを設置する流れになりました。勿来工場が弊社グループの中では2004年に設置し最初となりましたが、以降は十数缶のバイオマスボイラー、新エネボイラーを設置して、石炭や重油の置き換えを進め、コスト及びCO2削減につながっています。

――しかし、ボイラーの取り替えには相当なコストがかかりそうです。

野村:弊社の場合、ボイラーとタービンのセットで、約70億~100億でしょうか。

――そんなにかかるんですか!初期投資を回収するのは大変ではありませんか?

野村:時間はかかりますが、回収はきちんとできています。バイオマス燃料に切り替えることにより、重油が減った工場もありますし、石炭が減った工場もあります。化石燃料が高騰していますので、バイオマスボイラーはコスト的にも見合うものです。

――日本製紙として創エネについてはどう考えていますか?

野村:バイオマスボイラーや新エネボイラーがある工場は、創エネにも気を遣っているケースが多いです。紙製造では、莫大な温排水を出しています。その排水の温度が例えば40℃としましょう。排水前に熱交換して、もっと低い温度で外に出すようにすれば、その分創エネになります。ただし、温度が低いものを熱回収するのはなかなかハードルが高い。弊社ではまだ導入していませんが、補助金次第では、バイナリ―発電設備のように比較的低い温度でもエネルギー回収できる設備を導入する余地はあるかと思います。

――業界全体として、ボイラーにはどのような変化がありますか?

池田: 90年以降、新エネボイラーを少しずつ増やし、2003年以降は爆発的に増えてきました。2004年から2008年の間は原油の価格が相当上がったため、廃棄物やバイオマスに燃料転換を進めました。現在、全国の製紙工場が保有する新エネボイラー、これはバイオマスもあるし、廃プラや廃タイヤなどの廃棄物を燃やせるボイラーもありますが、約60基あります。私どもの会員会社は約110事業所ですから、平均的には2工場に1基入っているような勘定になります。