第3回 日本鉄鋼連盟 国際環境戦略委員会委員長/新日鐵住金株式会社 環境部上席主幹・地球環境対策室長 岡崎照夫氏

日本は世界最高水準のエネルギー効率をさらに極め、世界に貢献する


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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日本はブレークスルー技術開発で、世界に貢献していく

――国内での今後の課題は何でしょうか?

岡崎:経団連が中心となって京都議定書第一約束期間の自主行動計画の次の低炭素社会実行計画を議論していますが、産業界として共通な考え方が出来上がってきました。鉄鋼業の事例では、国内でのCO2排出量削減量は約500万トン(対2020年BaU=自然体ケース)ですが、海外では技術移転・普及で年間約7000万トン削減の貢献ポテンシャルがあります。

――ブレークスルー技術の開発状況はいかがでしょうか?

岡崎:2050年に向けて鉄鋼需要は現状の2倍程度に増えていくとの予測が種々機関(IEA, RITE等)でされています。この時点で、発生するスクラップ量も増えるため、電炉(スクラップを溶解して鉄鋼生産を行う)生産は増加しますが、需要がそれ以上に伸びるため、鉄鉱石を還元する製造ルート(高炉転炉法)の生産も大幅に増えます。

 鉄鉱石の還元には、石炭を使います。これは炭素と水素の塊ですが、より少ないCO2排出量で還元するには、たとえば水素の比率を上げることが考えられます。一つには水素単体をうまく使えればCO2が発生せず、水だけしか出てこない。水素を使って還元する技術ですが、ラボ試験でごく少量作るのは比較的簡単ですが、大量生産することは非常に難しい。もう一つは、CO2分離です。2050年時点でも水素還元に完全に置き換わることは考えられず、やはりマジョリティーは石炭を使った還元が残ります。その場合には、CO2は必ず出てきます。そのCO2を分離して取り出すCO2分離回収技術も重要です。この二つを柱にして、国家プロジェクトで次世代の革新技術として鉄鋼各社が連携して開発しています。

――これはまさにブレークスルー技術になりそうですね。

岡崎:2050年実現を目指して「革新的製鉄プロセス技術開発(COURSE50)」を進めてきましたが、前倒しして2030年に一号機を国内に導入することを目指しています。このような取り組みは2000年代初頭から欧州で研究開発を始めています。次いで日本でもCOURSE50がスタートし、米国ではラボベースで研究開発されています。この中で、日本の特徴は、鉄づくりの中で発生する廃熱をうまく回収して、水素製造やCO2分離技術に生かしていることです。革新技術の中にも、エネルギー効率改善をきちんと入れております。これにより、日本の世界最高水準のエネルギー効率の可能性をさらに高めるべく努力し、我々は国際連携により、世界全体のエネルギー効率改善とCO2排出削減に貢献していきたいと思っています。

【インタビュー後記】
 京都期間における鉄鋼業界の自主行動計画がいかにチャレンジングなものであるのか、岡崎さんのお話を聞いて再確認しました。リーガルバインディングではないが、社会へのコミットメントとして、敢えて厳しい目標に向かって取り組んでこられた真摯な姿勢には感服しました。以前、製鉄所の現場を見学したことがありますが、想像を超えた大規模な製鉄プロセスにおいて、省エネを図ることの大変さを垣間見た思いでした。ポスト京都における低炭素社会実行計画では、京都議定書第一約束期間の実効性をさらに発展させる計画が盛り込まれていますが、最高水準の技術開発で国際貢献していくことに日本の使命を感じます。

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