第3回 日本鉄鋼連盟 国際環境戦略委員会委員長/新日鐵住金株式会社 環境部上席主幹・地球環境対策室長 岡崎照夫氏
日本は世界最高水準のエネルギー効率をさらに極め、世界に貢献する
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
地球規模の持続可能性を考えると、中国との連携は不可欠
――主に日本が中国へ技術供与という形になるのですか?
岡崎:京都議定書が採択された1997年は日本も中国も鉄鋼の生産は、ちょうど1億トンずつでしたが、その後、日本の生産も1~2割伸び、中国は7億トンまで生産量を伸ばしています。97年当時の中国は古い設備で効率が悪かったが、増えた分の6億トンは、概ね最新鋭設備で作っています。毎年中国では当時の新日鉄規模の設備が1個ずつ増えている状況でしたが、最近では新日鉄が毎年2個できているイメージです。鉄鋼需要も生産能力もともに伸びてきましたが、最近ではオーバーキャパシティになり、各国に少しずつ輸出を始めています。ですから、鉄鋼の国際マーケットでは、まさに競争相手です。しかし、一番製造が難しい鋼などは生産できないため、日本から輸入しています。
――国際市場においてはライバルですが、連携も大事なのですね。
岡崎:そうです。現在、技術に基づくボトムアップ型の官民連携アプローチのGSEP(エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ)では、我々は日米連携を一番重視して推進しています。米国からすると、日本の鉄鋼業がこれまでやっていたようなCDMは、競争相手である中国に一方的に利得を渡すようなことになるため日本を批判していました。
CDM(クリーン開発メカニズム)では、我々が中国に行って省エネ技術移転を行い、そのプロジェクトを一緒にCDM申請を国連に行い、承認登録されクレジットが発行された段階で、クレジットを日本側が買い取り、中国の鉄鋼企業に現金をお支払います。結果的には技術を日本から渡して、お金も渡している格好になります。
米国としては、競争相手にそんなことするなんてけしからん、と怒るわけですが、京都議定書の性質上やらないよりはやった方が我々にもメリットがあるからやるわけです。自分で設備投資を追加してやるより、お金を払ってやった方がいい。日本はイコールフッティングではない京都議定書を批准したため、それは不平等そのものですが、その中で一番経済的にやろうと思ったら、中国にお金を渡すのが一番経済合理的なのです。
――なるほど、米国もその説明に納得しましたか?
岡崎:彼らも「なるほど」って言っていました(笑)。日本鉄鋼連盟では欧州との連携を進めていますが、それ以外にも各社がそれぞれ連携を進めています。
――国際的な連携は、国内での取り組みにメリットがありますか?
岡崎:結局国内で温暖化対策を進めるためのスキームをどうするかということが最も大事なことです。製品を通じた社会でのCO2削減貢献や、省エネ技術普及などによる地球規模でのCO2排出削減活動が温暖化対策として実効性があり、日本の国内で総量規制などに走ることはそのような活動を制約してしまい温暖化対策に逆行する。日本の役割や実態にふさわしい実効性ある温暖化対策を誘導する政策・施策の導入の重要性を示し提案するためにも、国際連携を通じて具体的に立証しいていくことが大切です。