日本鉄鋼業、世界で最も優れたエネルギー効率を維持
小田潤一郎・秋元圭吾
公益財団法人 地球環境産業技術研究機構
まとめ:エネルギー国際比較から見えてくるもの
日本の鉄鋼業のエネルギー効率(転炉鋼)は、2010年においても世界で最もエネルギー効率に優れていると推計された。これは、多数の省エネ技術の活用(ハード面)、製鉄所全体のエネルギー管理(ソフト面)の両方を地道に積み重ねてきた結果と言える。リーマンショックに端を発する世界的な鉄鋼需要急減(それに伴う稼働率低下など)もある中で、優れたエネルギー効率を維持している。
政策的な意味について考察すると、日本の持つ省エネルギー技術の海外展開をより加速させるような政策的バックアップが求められる。例えば、インドは国内に鍵となるエンジニアリング会社が育っておらず、また長期的に鉄鋼生産増加が見込まれるため、日本の省エネルギー技術普及のポテンシャルが大きい。ドイツや中国のエンジニアリング会社との競合もあるため、日本の省エネ技術普及は容易ではない。そのため「二国間クレジット制度」のさらなる進展にも期待したい。
ビジネスという観点からは、世界の鋼材市場で日本が勝ち残っていく必要がある。日本のエネルギー効率は世界最高水準であるため、これは世界全体のCO2排出抑制の点からも望ましい。ただし、近年は、東南アジア地域での中国鋼材比率、ヨーロッパ地域での旧ソ連鋼材比率が増加する傾向にあり、鋼材市場の国際競争が今後ますます激しさを増すことが予想される。世界全体でのCO2排出抑制の点において、激しさを増す鋼材市場の国際競争を阻害しない国際公平性の高い温暖化政策をとることが重要である。