電力システム改革論を斬る!
在米のエンジニアに聞く米国スマートグリッド事情
電力改革研究会
Policy study group for electric power industry reform
米国では発送電分離による電力自由化が進展している上に、スマートメーターやデマンドレスポンスの技術が普及するなどスマートグリッド化が進展しており、それに比べると日本の電力システムは立ち遅れている、あるいは日本では電力会社がガラバゴス的な電力システムを作りあげているなどの報道をよく耳にする。しかし米国内の事情通に聞くと、必ずしもそうではないようだ。実際のところはどうなのだろうか。今回は米国在住の若手電気系エンジニアからの報告を掲載する。
一般家庭まで自由化されているのは一部の州
私は現在テネシー州に住んでいるが、電力会社を選ぶことはできず、自宅のある地区に電気を供給するLCUB社という名の小さな公営の電力会社と契約している。
ここテネシー州では、大口の需要家も含めて、電力の小売自由化は行われていないのだ。米国では州単位で電力自由化が進められており、一般家庭まで自由化されているのは、2011年12月時点で16州とワシントンD.Cにとどまっている(図2)。以前、一部の日本メディアが「自由化した結果、米国には3千を超える電力会社がある」と報じたらしいが、自由化する前からその数の電力会社が存在しているのであり、明らかな誤報である。