リオ+20参加報告 ①
リオでの交渉プロセスをどう読み解くか?
立花 慶治
経団連自然保護協議会 顧問
国連気候変動枠組み交渉においては、議長が指導力を発揮しようとするや否や、”Country driven!(各国主導) ” とか “Transparency! (透明性)” という錦の御旗※8が掲げられ、議長は立ち往生するのが常である。
この点ブラジルは上手に進めた。議長国裁定案「ブラジル文書」は、各国の利害がどうしても一致せず ”Country driven” のままでは決裂するしかない、というタイミングをギリギリまで待って出された。しかも、「ブラジル文書」の噂が流れた時には既に公式website上で公開されていた。”Transparency” にも適応していたのである。
リオ+20の成果文書は、なるほど期待外れかもしれない。しかし、今の主要各国の政治事情・経済事情を考えれば、これ以上の成果が出せると本気で期待していた政府代表団はいなかったのではないか?
各国が決して呑めない表現は消す。決して合意できない条項は消す。そして各国に等しく不満足感を与えつつ、未決定事項は将来に期待をつなぐ。
こういう断固とした議長国の方針の下、プロの国連交渉官たちが膝詰で交渉を行ったのだ。「合意」に至ることはそんなに難しくなかったであろう。不満は残るとしても、少なくとも後になって解釈の違いで揉めることはないに違いない。
しかも、国連交渉官にとって最も避けなければならない事態、すなわち合意文書の採択に失敗し「国連は死んだ」という評価が下されるような事態は、回避されたのである。
そして「リオの伝説」も守られた。実に4万人を超える人々が世界中からリオに集まったのである。
この集客力!それをあらかじめ想定した複数のサイドイベント※9会場の設置。結果として、持続的発展に関することならおよそ考えられること全てをカバーする最新の知見・討論の膨大なデータベースが構築された。そして「リオ+20」で何かをした実績に与える「お墨付き効果」の絶大さ。
ブラジル外交の大成功、と筆者が思う所以である。
- 脚注)
- ※8
- 前者は「議長は勝手に文案を作るな!」、後者は「議長は陰でこそこそと何をやっているのか!」という意味。
- ※9
- サイドイベント一覧は、http://www.uncsd2012.org/meetings_sidevents.html 参照