ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ①
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
2011年の燃種別発電容量・発電電力量
下記は2011年12月末時点での、燃種別発電容量比率(左棒グラフ)と、2011年の燃種別発電電力量比(右棒グラフ)である。
比較すると、ドイツの全発電容量の14.9%を占める太陽光発電も、発電電力量では3.3%にしかならないことがわかる。この3.3%の発電電力量をまかなうために投じた費用との見合いが問題となっており、次回に取り上げる全量固定価格買い取り制度見直しへとつながった。
ところが、こうした状況を知ってか知らずか、日本はこの7月1日から、まさにその全量固定価格買い取り制度を導入したのである。我が国でも太陽光発電の平均稼働率は12%にしか過ぎず、その導入により、燃料費の節減が多少図れるものの、頼れるバックアップ電源(今の技術からいえばガスや石油火力等の安定的電源)の設備を節減できるものではないこと、それゆえ再エネとバックアップ電源の二重の設備投資を社会全体で負担せざるを得ないものであることは、認識しなければならないないだろう。
しばしば、「原子力発電所○基分の太陽光発電」などという表現が聞かれるが、設備容量で比較することは、全く意味がないことに注意しなければならない。
数字のトリックで、虚像を理想像と見間違えたなら、我々の行く先は・・・。
次回は、自由化の進むドイツで、本当に電気料金が安くなっているのかについてお伝えします。
なお「月刊ビジネスアイ エネコ9月号」(8月28日発売)では、このレポートを踏まえ、特集で『電力システム改革』の問題点に切り込みます!
参考)
① BDEW(ドイツ連邦エネルギー・水道連合会)ホームページ
電源計画
2011年の燃種別発電容量・発電電力量
② Bundesnetzagentur(ドイツ連邦ネットワーク規制庁)ホームページ
③ 先人に学ぶ ドイツ太陽光発電導入政策の実態
④ 先人に学ぶ2 ドイツの挫折 太陽光発電の「全量」買い取り制度廃止へ
⑤ シュピーゲル誌(2012年1月18日)
⑥ 中部電力広報誌「場」 Vol1