スマートメーターは「光の道」と似ている

-スマートメーターをメタボにするな


Policy study group for electric power industry reform

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第二の「光の道」か?

 電気料金決済のニーズを超えた高機能のスマートメーターを設置するかどうかの議論は、2年ほど前に論争となった「光の道」構想と論点や議論がそっくりである。2015年までにすべての世帯でブロードバンドサービス利用を実現する、という、当時の原口総務大臣が掲げた野心的な構想である。どちらも、「ニーズがどの程度あるか不明なインフラに対する先行投資」である。ブロードバンドも高機能スマートメーターも「便利なものであることは間違いないが、全ての世帯に普及させるべきものかどうか」という論点も共通している。光の道の議論でも、光の道を使う側は、インフラが整備されればニーズはついてくる、といった主張をし、先行投資をさせられる側は、不足しているのはインフラではなく魅力のあるコンテンツであって、コンテンツの目途がないままインフラ投資をしても非効率なだけ、といった主張をしていたように記憶している。結局、光の道の議論は、原口大臣の交替とともに下火になり、今はほとんど聞かれない。「便利は便利だが、全ての世帯に政策的に普及させるまでのものではない」というのが、世の中の出した結論だったということかと理解している。計測粒度の高い高機能スマートメーターも今の段階では、「光の道」以上に「便利は便利だが、全ての世帯に政策的に普及させるまでのものではない」と感じられる。

高度なニーズにはBルートの活用を

 他方、スマートメーター制度検討会では、上述の周波数制御レベルの高度なDRや「モノのインターネット」サービスのニーズなどに対応する現実的な手段として、通称Bルートと呼ばれるものを提唱している。同検討会の整理によると、メーターから電力会社のサーバーにデータを伝送するルートをAルートと呼び、メーターから屋内に設置されるHEMS(Home Energy Management System)に伝送するルートをBルートと呼ぶ。

(出所)スマートメーター制度検討会報告書 http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004668/report_001_01_00.pdf

 上で紹介した周波数制御レベルの高度なDRや「モノのインターネット」サービスを期待する世帯は、Bルートの先に設置されるHEMSにその機能を持たせればよいのである。その方が、各世帯のニーズに応じてインターネットとも融合した多様なサービスが可能になるし、わが国独自の計量法に定めるメーターの全数検査や硬直的な機器取替えサイクルにとらわれることもなく、サービスの自由な拡張が容易になる。ただ、そのためには現在Bルートで提供される予定のデータも、30分毎の消費電力量となっているのは、早期に改めたほうがよいだろう。HEMS側から要求があれば、随時、メーターが計測値を返すような仕様にするべきだ。その上で、Bルートの通信は標準化が行われたようであるから、メーター側にはBルート向けのインターフェイスだけ用意し、HEMSを活用したより高度なサービスを求める世帯は、個々のサービス事業者が指定する通信モジュールを設置すればよい。このモジュールのコストは、勿論、HEMS設置を希望する各世帯が負担する。そうすれば、受益と負担の関係も理に適ったものになる。