藤井敏道氏・セメント協会 生産・環境幹事会幹事長/三菱マテリアル株式会社 常務取締役に聞く[後編]
縁の下の力持ち、セメントの循環型社会への貢献
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
日本は世界トップのエネルギー効率で貢献を
――セメントというと堤防やダム、コンクリートで固めるものという表の部分しか見えにくいですが、実際には資源リサイクルに大きく貢献していることに認識を新たにしました。
藤井:セメントは、エネルギー多消費産業です。そのため産業の効率化、エネルギー効率からいうと日本を100とすると他国というのは全然レベルが違います。
――たしかにずいぶん違いますね。
藤井:国際的にエネルギー効率のいい技術を提供し貢献する。私ども国際会議などでさまざまな技術支援を呼び掛けています。エネルギー効率が他国より優れているのは、日本は地震もありますので、それに対応できるような非常に高品質のセメントを作っています。セメントを作る上でできるだけ資源効率を向上させるために、省エネルギーも積極的に取り組んできた。それで世界的にトップの位置にあるといえるでしょう。
――セメントの国内需要はどのような状況ですか。
藤井:昨年のセメントの国内需要は年間4160万トンでしたが、実は最盛期の半分以下に落ちています。(セメントの国内需要は、バブル経済終盤の1990年度に8628万トンとなりピークを記録)
――十数年で大きくグラフが動いていますね。
藤井:これが今の日本の実情です。セメント業界ではこれに対応すべく生産力を落としてきた。しかし、このままどんどん減っていくかというと、そうではないと思います。セメントが安定的に社会基盤のインフラ整備に必要だからです。たとえば先進国では、国民1人当たりセメントは年間300キロから400キロ使われているレベルですが、中国では1人当たり1トン以上使っています。日本も、社会基盤を整備する時にはコンクリートを使いますからぐっと伸びてきたが、ある程度整備できたところで安定状態になった。さまざまな災害対策を含め、若干生産力が戻るかもしれませんが、昔のようなことはないでしょう。しかし、社会インフラの整備だけではなくて、循環型社会を築く上でもセメント産業は必要不可欠です。新興国ではセメント需要が増えているので、日本のセメント産業は海外進出を積極的にやっていくことになると思います。