藤井敏道氏・セメント協会 生産・環境幹事会幹事長/三菱マテリアル株式会社 常務取締役に聞く[前編]
コンクリートが人の命を守る
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
コンクリートが人の命を守る
――コンクリートが社会に貢献できることは何でしょうか。
藤井:セメント業界のキャッチフレーズは、「守ろう、日本」です。コンクリートを通じて、いろいろな社会的なインフラの整備に貢献していきたいと考えています。大雨などの自然災害から人の命を守るために、たとえば砂防ダムを造ることによっても役立っています。今回の震災では副次的な例ですが、仙台の津波被害が沿岸部でくい止められたのは、実は高速道路があったからなんです。
――私も震災後、仙台に行って大変驚きました。高速道路を境に右と左ではまったく被害の状況が違いました。
藤井:そうです。高速道路が地震や津波被害を食い止める上で役立った。また道の駅がありますが、そこも避難場所になった。「コンクリートから人へ」と言われますが、コンクリート自体は社会の基盤整備に必要であり、人の命を守るために必要なものであることを我々はアピールしたい。セメントは低炭素社会、循環型社会、自然との共生というこの3つのものを組み合わせながら持続可能な社会をつくっていくことを考えています。
――「コンクリートから人へ」というスローガンは、当時業界として複雑な思いでしたか。
藤井:我々は社会にとって必要な素材を供給しているのだという自負がありますから、そういう言い方を一方的にされるのはおかしいのではないかという思いはやはりありました。
――東日本大震災後は、そのスローガンもほとんど聞かれなくなりましたが。
藤井:無駄な公共事業はやってはいけませんが、地震、津波、最近は局地的な豪雨がありますから、人の命を守るために必要な素材という位置づけの中で、必要なものは推し進めていく必要はあるのではないかと思います。
――大雨や豪雨に見舞われると被害の規模が心配ですし、コンクリートは災害防止に役立ちますね。
藤井:これは一個人としての考えですが、税金は何のために払っているのかというと、やはり命を守るためではないでしょうか。それが一番の目的だと思いますから、そういうことにきちっと使っていただきたい。
(後編に続く)