先人に学ぶ2 ~ドイツの挫折 太陽光発電の「全量」買取制度、廃止へ~


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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メガソーラー導入の甘い誘惑

 固定価格買取制度というのは、その名の通り、買取価格を「固定」するものである。再生可能エネルギー事業者間に競争はなく、営業努力はまったく不要だ。国が定めた高い価格で、一定期間買い取ってもらうことができる。つまり、顧客も価格も固定された制度といえる。

 さらに、制度の基本設計は、技術の普及にともなって買取価格を徐々に低減させていくこととなっている。これが意味するところは、現在の技術(それが不完全なものであっても)の普及を促す力はあっても、技術開発を促す力は非常に弱いということだろう。

 たとえば、今、中国から安い太陽光パネルを大量に輸入してメガソーラーを設置すれば、高い価格(例えば1kW時あたり45円など)で一定期間確実に買い取ってもらえる。太陽電池メーカーとしては、数年後、買い取り価格の下落分を補って余りある高効率技術を開発する相当の自信でもない限り、技術開発を続ける気にはなれないだろう。まさに「早い者勝ち」なのだ。

 ドイツでも、買取価格が見直される前にと皆が考え、2011年に駆け込みで設置されたパネルからの発電量買い上げだけでも、今後20年間で180億ユーロ(1兆9400億円)になるとの試算があると前回紹介したが、「早い者勝ち」された国民は、長年にわたり大きな負担を背負い続けることとなる。

 再生可能エネルギーの導入に関して、「日本は周回遅れだ」あるいは「日本だけがバスに乗り遅れている」と揶揄する声をよく耳にする。しかし、行き先を間違ったバスに駆け込む必要はない。「焦った時こそ慎重に行動する」、「引き返せる時に引き返す」、これが、今、我々に求められる態度ではないだろうか。

 もちろん、今回の修正案に対し、ドイツで緑の党は「脱太陽光法」であるとして断固反対を表明しているそうである。すでに中国勢に押されて厳しい経営状況に置かれているドイツ国内の太陽光発電関連メーカーも命がけで反対するであろう。この修正案が今後どうなるか、「先人」の判断に注目したい。

ドイツ連邦環境省プレスリリース
http://www.bmu.de/pressemitteilungen/aktuelle_pressemitteilungen/pm/48390.php
http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/ergebnispapier__eu-effizienzrichtlinie.pdf

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