日本の技術を生かすことが温暖化問題解決のカギになる
関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[後編]
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
CO2排出をさらに30%削減できる技術を2050年までに実用化する
――将来に向けて、CO2排出量をさらに減らすためには、どのような方法があるのでしょうか。
関田:世界最高のエネルギー効率を誇っていると偉そうにしていてはいけません。次に向けた努力も当然行っています。将来に向けて、「COURSE50」というロングスパンの革新的製鉄プロセス技術開発を推進しています。CO2の排出抑制とCO2の分離・回収によって、トータルのCO2排出量を約30%削減する技術を開発する計画です。
具体的には、2030年頃までに技術を確立し、2050年までに実用化・普及することを目指しています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発プロジェクトの「環境調和型製鉄プロセス技術開発」として正式に採択されており、2008年にステップ1がスタートしています。そのほかにも、「第三の原料」と我々は呼んでいますが、「フェローコークス」という原料を使うことによって高炉における反応効率を上げる技術開発も行っています。
日本鉄鋼連盟と加盟各社は、今後も、地球規模の大幅なCO2削減に全力をあげて取り組むつもりです。
「COURSE50」の概要。2050年までにCO2排出量を30%削減することを目指している(出典:日本鉄鋼連盟)
「三丁目の夕日の時代に戻れますか?」と問われて、一瞬「えっ」と言葉に詰まりました。具体的な生活のイメージとして、そんなに前の時代に戻るような中期目標だという認識はなかったからです。「ものづくり・技術立国としての日本の立ち位置をはっきりさせ、温室効果ガスの削減目標数値ではなく、技術で世界に貢献していくべきだ」と関田さん。今後、中国をはじめとする新興国の経済成長で世界の鉄鋼需要は大幅な増加が見込まれており、日本のエネルギー効率技術がますます必要とされる時代になりそうです。日本の技術へのこだわりに、関田さんご自身が長年技術者として日本の鉄鋼業に携わってきた誇りと自信を感じました。