奥平総一郎・日本自動車工業会環境委員長に聞く[後編]
6重苦を乗り越え、日本のものづくりを守りたい
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
3.11以降も戦略は変わらない
ガソリン車が主力だがプラグインハイブリッドやEV、燃料電池車開発にもしっかり取り組む
――3.11以降、研究開発等で重点を何か置き換えよう、ここをより重点的にやろうなど、戦略は変わりましたか。
奥平:特に変わっていません。今まで通りに安全、安心、環境が優先されると思います。安全、安心、環境のためには、不断の技術開発が必要です。今後とも、しっかり取り組んでいきたいと思います。
石油資源には限りがあり、オイルピークが騒がれているなか、省エネ、脱石油の技術開発は、今までにも増して注目を浴びることは間違いありません。
これまでも我々が取り組んできた燃費のよいエンジン開発、エネルギーを回収するハイブリット技術、さらに外部からもらった電気エネルギーを使って燃費をよくするプラグイン・ハイブリット、EV(電気自動車)、水素を使った燃料電池車と、省エネ、脱石油の技術研究、開発は今までもやってきていますし、今後も変わらないだろうと思います。
――今回の電力のリスクをみて、EVの可能性についてはどうでしょうか。
奥平:電気エネルギーは二次エネルギーとして、使い勝手がよいエネルギーです。よい電池が開発できればEVが広がる可能性はあると思います。
EVの現在の問題点は、電池が非常に高価であること、電池のエネルギー密度が低いため体積が大きくなり重くなること。また、インフラが不十分で、充電に時間がかかるといったことがあります。しかし将来、連続非接触充電、非常にコンパクトで安価な電池など、技術のブレーク・スルーがあれば、EVが増えるのは間違いないと思います。
――徐々にガソリン自動車からEVへと置き換わっていくのでしょうか。
奥平:すぐにガソリン車からEVに置き換わるかというと、疑問があります。ガソリンはエネルギー密度が高く、利便性から考えると、EVが現状のままではガソリン車の代替となることは難しいと思います。ただ、EVはゼロ・エミッションなので、将来、コミュニティのなかの移動手段などに広がっていくと思います。
我々は電池の技術開発に力を入れていきますが、まだ開発要素に難しいところがあります。ゼロ・エミッション車としては、水素を活用した燃料電池車が割と早く実用化できるかもしれません。