奥平総一郎・日本自動車工業会環境委員長に聞く[前編]
東日本大震災をバネに、災害に強い体制を構築したい
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
平時から小さな単位で協力関係を築いておくと、非常事態時にいい活動ができる
――震災後の政府の対応についてどう思われましたか。
奥平:今回、トヨタは東北の工場、仕入先、販売店および地域の方々など、誰を支援するかが明確で、震災直後から即座に、人や物資を投入できました。
東富士研究所がある裾野市(静岡県)では、相馬市(福島県)と「災害時の相互応援に関する協定」を結んでおり、市長がチームを作り救援物資を持って現地に入ったように、各地方自治体は姉妹都市など、日頃からのおつき合いがある都市を自ら支援しました。
一方、国や中央機関による被災地支援は、公平性などを勘案せねばならず、初動がどうしても遅くなります。震災などの巨大な災害でも、日本が一気に沈むことはないと思います。各地方自治体、企業同士が日ごろからコミュニケーションを密接にし、北と南、東と西、都市と地方など、顔が見える互助関係を網目の様に構築していくことが迅速な初動を可能とし、今後の災害への対応を考える際に非常に大切だと感じました。
――国でやろうとすると、ここを先に助けたら他から文句を言われると躊躇すると、いつまでも助けられない状況に陥ってしまいますね。
非常事態時の情報コミュニケーションとして、他に注目していることはありますか。
奥平:情報という面では、マスコミの情報も入ってきますが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)からもけっこう情報が入ってきて、割にわかりやすかったと思います。今後、災害時の情報の使い方として、大事になるのではないでしょうか。
今回、自動車会社は協力して、車が通った道のり情報を特定非営利活動法人のITS Japanに集め、「通行実績マップ」としてWebで公開いたしました。将来、車が情報通信のターミナルとなることができれば、携帯電話の基地局のアンテナが流されても、個々の通信が死なずに済むと思います。
また、多くの方が車で逃げようとされて、不幸にも津波に流される様子を目の当たりにしました。災害に強い車とはどうあるべきか、車が本来の移動・物資輸送手段という役割に加えて災害時にもっと役立てることはないか、研究していきたいと思います。
(次回につづく)