東日本大震災が浮かび上がらせた電力インフラの弱点


国際環境経済研究所主席研究員

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海岸付近に設置されている日本の発電所の弱み

 震災被害の全貌を電力網で確認してみよう。図1は東日本の電力網で、独立行政法人経済産業研究所の資料に最新情報を追加、電力各社ホームページから集めた3月11日の被災状況を示した。東北電力および東京電力の設備だけでなく、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県東海村)や共同火力に至るまで、地震と津波により青森県八戸市から茨城県鹿島市までの太平洋岸にある発電所はすべて停止した。その後、火力発電所の復旧を中心に供給能力は急回復しているが、依然として昨年のピーク供給電力からは2000万kWほど下回っている(表2)。

 あれだけの規模の震災が起きても何とかこの程度の落ち込みで経済が持ちこたえているのは、国民の危機意識がもたらす真摯な節電努力の賜物、また電力各社の供給責任完遂へ向けた取り組みの結果であり、奇跡的ですらある。政府は現状に甘えることなく早急に電力需給の安定化を図る必要がある。

 環太平洋地震帯の上に乗っている日本列島は、これからもいつ大きな地震が発生するかわからない。日本の発電設備は原子力も火力も冷却水や燃料を入手しやすいという理由からほとんどが海岸に設置されており、津波に対してきわめて脆弱である。もし、近々に東海地震や関東大震災のような規模の地震、あるいは日本海中部で大きな地震が起きたら、日本経済は立ち直れなくなり、国民生活に及ぼす悪影響は計り知れない。原発の再稼働の是非を議論する時間は、政治家にはほとんど残されていないということを認識すべきである。

図1 北東日本50Hz系超高圧送電網と主要発電所
図1 北東日本50Hz系超高圧送電網と主要発電所

地震と津波のために、青森県八戸市から茨城県鹿島市までの太平洋岸にある発電所はすべて停止した(出典:戒能一成 独立行政法人経済産業研究所「日本の地域間連系送電網の経済的分析」)

表2 東日本大震災後の復興状況(万kW)
表2 東日本大震災後の復興状況"

供給能力は急回復しているが、依然として昨年のピーク供給電力とのかい離は大きい(単位:万kW)