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ポスト京都に向け、次の手を探る欧州


元大阪大学特任準教授


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EUが示した2050年までの低炭素ロードマップ

 このグラフから、いくつかの興味深い点が読み取れる。

 まず、2020年までに90年比20%削減という現在の目標は、現状の政策の継続で十分に達成可能と見ていることがわかる。さらに、EUがすでにコミットしているエネルギー効率20%改善目標を達成すれば、域内だけで25%の削減可能であることを示している。

 興味深いのが、毎年の排出削減率である。当初、2050年の80~95%に向けて、現状から一直線の削減を計画するとも言われていたが、現在の状況や、産業界からの「新技術の商業化にかかる時間や設備投資サイクル等の実情を勘案すべき」といった要請などを受けて、当初の削減率は緩く、2030年以降に大幅に削減することにしている。具体的には、2020年までは年率1%削減、その後2030年までは年率1.5%削減、2030年以降は年率2%削減になっている。さらに最終的な域内削減量も、コミットした80~95%のうちで最も緩い80%に設定しており、総じて、2020年までは可能な限り排出削減目標が緩くなるパスを示しているようである。

 一方で電力セクターは、2050年までにほぼ100%削減することが期待されており、そのためには、EU-ETSの毎年の排出総量Cap削減率(年1.74%減)を、2030年に向け強化していく必要があることが示唆されている。

 さらに、こうした排出削減策を実施する理由として、気候変動対策だけでなく、域外へのエネルギー輸入依存度やエネルギー購入費用の低減、新規雇用創出や、大気汚染や健康への悪影響の改善などをあげているのも興味深い。温暖化対策というだけでは、排出削減策への広範な支持を得られなくなって来ていることが伺える。さらに、中国やブラジル、韓国の例を挙げつつ、「途上国がイノベーションに対して積極的であり、EUは立ち止まっていると遅れてしまう」と指摘し、危機感を煽っている。

 短期的には野心的な排出削減目標を設定できないものの、なんとかコミット済みの長期目標と辻褄を合わせることに成功しているロードマップから、EU政策担当者の苦労が伺える。しかし、このロードマップをテコに、国際政策を動かしていけるかと言うと、疑問に思う点がいくつかある。