中国の「省エネルギー目標」が意味するもの
小谷 勝彦
国際環境経済研究所理事長
上に政策あれば、下に対策あり
中国は地球温暖化問題に関して、京都議定書における「共通だが差異ある責任」という立場から、削減目標の義務化を免れてきた。しかし、1990年当時と比べて中国のCO2排出量は大きく増加しており、今や世界第一位の排出大国である。国際的には京都議定書における削減義務に反対しながら、国内では、第11次5ヵカ年計画(2006~2010年)において省エネ目標を「必達目標」として掲げ、GDP当たりのエネルギー消費量を2005年比で2010年までに20%削減することにしていた。
このため、国務院は鉄鋼をはじめとする十大産業に関して、エネルギー多消費である旧式設備の抑制策を進めており、鉄鋼では、エネルギー効率の悪い内容積が300m3以下のミニ高炉を淘汰の対象としていた(ちなみに、新日鉄大分製鐵所の高炉は5775m3でエネルギー効率が高い)。
中国工業情報部の李毅中部長(大臣)は「11次5ヵ年計画において、7億t以上もある鉄鋼設備能力のうち製銑部門(高炉)はすでに1億1100万t、製鋼では6600万t、コークスは500万tも削減された。世界の半分以上の16億tを生産しているセメントでは3億4000万t、製紙は1000万tが淘汰された」と語っている。(鋼材信息、2010年11月7日)。
ところで、中国では「上に政策あれば、下に対策あり」という有名な言葉がある。われわれ日本人は、北京政府の発表をすぐに信じてしまうが、中央政府の政策に対して、地方がサボタージュしてきたのが中国の歴史である。300m3以下の高炉は確かに廃止したが、すぐ隣には450m3(淘汰の対象外)のミニ高炉が建設されている。
また、中央政府の大臣が地方の淘汰対象設備を見にいくと、確かに設備は止まっていたが、お役人が帰ると設備は再び動き始めたという話を聞いたこともある。