中国の「省エネルギー目標」が意味するもの
小谷 勝彦
国際環境経済研究所理事長
中国は極めて政治的に国家統計を使うことがある。
たとえば、GDP(国内総生産)成長率は国家目標であり、各省の省長や共産党書記にとって勤務評定の対象である。「官出数字、数字出官」と言う言葉があるが、これは「官僚が数字を作り、数字が官僚を出世させる」という意味である。したがって、数字の水増しが行われ、各省のGDPを積み上げると国のGDPよりも大きくなるのが毎年の現象だ。
国家のGDP成長率も何度も上方修正される。2006~2008年の公表数字は2度、3度と修正された。
2006年10月、「2005年のGDP成長率を2006年8月になって9.9%から10.2%に上方修正した」邸暁華・国家統計局長が突然罷免された。表向きの理由は、「成長至上主義を修正しようとする胡錦涛政権に従わなかった」と言われたが、汚職事件で解任された陳良宇・前上海市書記などの「経済発展」派と胡錦涛国家主席などの「和階社会」派の権力闘争が背景にあるとも言われている。
産業統計でも同じような例がある。自動車生産は乗用車と商用車に分類されるが、2000年頃はトラック等の商用車の比率が圧倒的に高かった。ところが2007年には、乗用車が638万台と全体の72%を占めるにいたった。同時期の米国の乗用車生産は437万台である。
統計を仔細に眺めると、当初、SUV (スポーツ用多目的車)は商用車の範疇であったが、2006年になって、2005年に遡って定義が乗用車に換えられた。乗用車生産を大きく見せる意図があったのではないかと捉えられても仕方がないだろう。