米国オバマ大統領は第二期目に入り、大統領就任当初からのテーマであった環境問題には熱心に取り組む姿勢を見せてきています。議会で環境法制化が頓挫した後、行政府の執行権限による環境規制の強化を目指そうとしています。また、シェールガス革命により、天然ガスの利用が拡大し、エネルギーの低炭素化は進んでいます。原子力発電も30年間の空白の後、新規原子力発電の新設が始まり、小型モデュラー炉の開発も加速しています。オバマ政権第二期は環境・エネルギー政策を一層展開させることが予想されます。
 オバマ大統領は第二期目の課題であるLNG輸出にも前向きな発言をしていますが、国内での受け止めは依然一色に染まったとは言えず、いろいろな動きが絡みあっています。そうした中、オバマ大統領はこれから数年の間に大統領実績ともなる「政治的遺産」つくりに専念することも考えられ、どのような形になるかが日本のエネルギーセクターにも影響を与えるものと思われます。
 本レポートでは第一期目以前からの経緯を振り返りつつ、日本のエネルギーセクターが留意すべき点を整理しながら米国の環境・エネルギー政策の進み行く方向とその主要論点を明らかにしたいと思います。

前田一郎(まえだ いちろう)/環境政策アナリスト
1956年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。東京電力入社。日本エネルギー経済研究所派遣を含め、1992年から1996年の間ロンドン事務所駐在。2004年から2008年ワシントン事務所駐在。