止める制度から地域で使い切る制度へ
印刷用ページ執筆者:雄弁部有志 溝口暖人(取り纏め)・川口大輔・堀江茉子・服部優奈・谷口柊介
本原稿は、明治大学公認の学術団体である私共雄弁部の有志部員が、「止める制度から地域で使い切る制度へ」と題して日本の送電におけるノンファーム型接続の課題を解消し、地域の電力需要、災害レジリエンスに寄与する政策提言をするものである。提言は先日開かれた部内の政策立案コンテストにて優勝した政策立案を掲載用に要約して作成した。本大会の審査員を快く引き受けて下さり、またこのような寄稿の機会を設けてくださった御研究所の小谷様に心より感謝申し上げる。
1-1.課題分析~ノンファーム型接続について~
ファーム型接続と、ノンファーム型接続について説明する。
従来のファーム型接続は、発電所を送電網につなぐ際、最大出力で発電しても電気を流せるように、送電容量を事前に確保していた。このため、契約上は送電容量が埋まっていても、太陽光や風力の発電量が少ない時間帯には、送電線に余裕が生じる。
ノンファーム型接続は、発電所ごとの専用の送電枠を保証せず、送電線に余裕がある時間は電気を流すことができる方式である。混雑時には、発電量を抑えることが接続の条件ではあるが、送電線の実際の利用状況に応じて空いている容量を活用し、送電線の増強を待たずに新しい再生可能エネルギーの発電所が接続可能になる。
日本では、2021年から空き容量のない基幹系統で適用が始まり、2023年からは電圧階級や空き容量の有無にかかわらず、適用されている。
1-2.課題分析~ノンファーム型接続が抱える三つの課題~
しかし、現行のノンファーム型接続には、三つの課題がある。
第一に、発電事業の発電量の予見可能性が低いことである。
発電所を接続できても、将来どの程度出力制御が発生するかは確実ではない。送電量が状況により変化するので、出力制御の量も変化するからである。そのため、発電事業者は売電収入を予測できず、資金調達にも影響が生じる。
第二に、混雑への対応が発電の抑制に偏っていることだ。
送電線が混雑した場合、発電量を減らせば混雑は解消するが解決策はそれだけではない。
送電を必要としない発電所の近くで蓄電池を充電したり、工場が電気を使う時間を変更したり、EVを充電したりすることでも、混雑を緩和できる。
しかし、現在は地域に存在する設備や需要をまとめて制御し、混雑対策として活用する仕組みが十分に整っていない。
第三に、送配電網政策と防災政策が分かれていることである。
平常時に系統混雑を緩和する蓄電池や分散型電源は、災害時には病院・避難所・上下水道施設・通信施設などへ電気を供給できる可能性がある。
しかし、現在は系統対策と自治体の防災対策が別々に進められ、同じ設備を平常時と災害時の両方で活用する仕組みが十分に整っていない。
2.ノンファーム型接続を「止める制度から地域で使い切る制度」にするための三つの政策立案
本政策は、ノンファーム型接続の利点を維持しながら、出力制御を必要最小限に抑え、地域の設備を災害時にも活用できる送配電網を実現するものである。
現行制度の課題に対応するため、三つの施策を実施する。
第一の施策は、出力制御リスクの見える化である。
一般送配電事業者に対し、送電線・変電所ごとの今後10年間の出力制御見通しを公表させる。予測は一つの数値に限定せず、再生可能エネルギーが標準的に増加する場合、蓄電池や需要調整が普及する場合などの複数のシナリオを示す。
また、毎年、予測値と実績値を比較し、差が生じた理由を公表する。これにより、発電事業者は出力制御の可能性を踏まえて立地を選択でき、資金調達の不確実性が減少する可能性がある。予測を大幅に上回る出力制御が継続した系統については、送電線増強、蓄電池、需要調整の費用と効果を再検証し、一般送配電事業者に期限を定めて対応方針を公表させる。
第二の施策は、地域マイクログリッドを活用した系統混雑の緩和である。
まず、経済産業省と電力広域的運営推進機関(OCCTO)が、将来の系統混雑と災害リスクがともに高く、地域内に蓄電池、EV、工場などの電力需要設備と再生可能エネルギーなどの発電設備が存在する地域を重点地域に指定する。次に、指定地域において、これらの設備をエネルギー管理システムによって一括制御する運営者を認定する。一般送配電事業者は、混雑が予想される場所、時間、必要な調整量を運営者へ通知する。運営者は、その情報に基づいて地域内の設備を一括して制御する。
このマイクログリッド構想が実現すれば、例えば、太陽光発電量が増加する時間には、蓄電池やEVを充電し、工場や給湯設備の使用時間を昼間へ移す。反対に、冷暖房などによって電力需要が集中する場合には、蓄電池を放電する。また、マイクログリッド内のEVの充電や工場の電力使用を、送電網が混雑している時間へ移し送電線を利用せずグリッド内で問題を解決する。
この構想を検討する際には、送電線の増強、従来の出力制御、マイクログリッドの活用について、費用と効果を比較する。短時間で局地的な混雑には地域の設備を活用し、恒常的な混雑には送電線を増強する。
これにより、必要な送電線増強を先送りすることなく、再生可能エネルギーの出力制御を減らし、既存の送配電網を効率的に利用できる。
第三の施策は、平常時に系統の調整や混雑対策に使う蓄電設備を、災害時にも活用する仕組みである。
この仕組みは災害時に、この蓄電設備を利用し、外部コンセントやポータブルバッテリーを通じて市民の電源を確保し、設備条件が整った地域では、マイクログリッドを系統から切り離して病院や避難所などの重要施設へ直接電力を供給するものである。
この施策を実行するために認定されたマイクログリッドの運営者や地域内の系統用蓄電池事業者に、自治体との災害時電力確保協定の締結を促す。
災害対応のために一定の蓄電容量を確保する事業者には、国と自治体がレジリエンス待機料を支払う。2027年度から全国5地域で3年間実証し、出力制御の削減量、混雑緩和に必要な費用、送電線増強を回避または延期できた費用、重要施設への供給能力、停電後の供給開始時間を評価する。
その結果を基に、2030年度からの全国展開を判断する。
本政策によって、ノンファーム型接続を、混雑時に発電を止めるだけの制度から、地域で電気を蓄え、使い、災害にも備える制度へ発展させる。
【雄弁会紹介】
明治大学雄弁部は、創立137年の学術系サークルです。主な活動は各大学の弁論部と弁論術を競い合う弁論大会であり、解決されるべき社会問題を探し出し、その解決策を考えています。弁論で身につけた能力を元に、今回のような政策立案コンテストなどを行い、日々社会問題に向き合っています。
国際環境経済研究所・所長山本隆三 コメント
送電線混雑の問題解消と災害時のレジリエンス強化には、マイクログリッドが寄与する。その観点を踏まえ、具体的に構想を説明している点は評価できる。ただし、タイトルに「止める制度」とし、最後に「発電を止めるだけの制度」としているのは、理解が少し異なるように思える。ノンファームは、再エネ導入を増やすための制度であり、出力制御は結果として生じる問題だ。止めるだけの制度ではなく、増やすための制度の結果止めることもあるというのが正しい理解ではないだろうか。出力制御は、再エネを大量に導入している国、例えば、ドイツ、英国、米国などでも実施されている。「電力の有効活用策を考える」という内容を反映するタイトルが望ましいように思った。











