路面の美観も大切では


ジャーナリスト

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もともとはブロック(タイル)を敷き詰めたカラフルな通りだが、黒いアスファルトを敷き詰めた個所とまだら模様になっている。商店街などで、しばしばこのような歩道を目にするように思う。アスファルト部分は、水道管やガス管の工事を終えた後、ブロック舗装の原形復旧(本復旧)をしないままになっている個所である。

美しくないな、いつブロック舗装に戻すのだろうと、気になりながら通り過ぎるが、なかなか工事が行われず、まだら模様が数年間、放置されていることもある。なぜすぐにブロック敷きに戻さないのだろうか。美観を問題にする人はあまりいないのだろうか。

最近目についたのは、東京都新宿区新宿3丁目の「MOA(モア)街」と呼ばれる繁華街である=写真=。写真を見ればわかるように、場所によっては元のブロック敷きの部分の方が狭いくらいである。

MOA街は、過去数年は路面がまだら模様の状態が続いていると記憶する。この道路を管理している新宿区みどり土木部道路課や、地元商店街の振興組合「MOA街」によると、確かに3、4年前からこうした状態が続いているという。

東京都下水道局は、都全域で老朽化した下水道管の補強改修工事を進めているが、MOA街では地域一帯の下水管を改修する「再構築」と呼ばれる工事が行われている。

新宿区道路課によると、「本管の再構築工事だけで2年近くかかり、さらに周辺の多くの建物は1960、70年代のもので建て替え時期に当たっている。新築すると、下水道本管と建物をつなぐ水道、ガス、下水道の取り付け管を新たに通すことも必要だ。この地区は電柱が地下化されているため電線、電話線も通す必要がある」というのが長期化している理由だ。

振興組合の事務所の人は、「ここの下水道管は戦後まもなく区画整理した時に敷設された老朽管。改修で耐震性が高まるので振興組合としては歓迎しているが、組合員からは早く進めてほしいという声もある。ただ、人通りも多く、工事ができるのは夜間だけで、時間がかかる事情もある」と答えた。

費用の問題もある。道路舗装工事の東証プライム企業「東亜道路工業」の担当者によると、「ブロック舗装の場合は面積などにもよるが、アスファルト舗装の2~3倍になる。工事ごとに一回一回復旧するとコスト的にかかるし、直したのにまたほじくり返すのかと批判も受ける」と言う。

MOA街の工事の中心となっている下水道局西部第1下水道事務所によると、「今いろんな企業者が工事に入っている状況だが、水道管の工事は今年(2026年)年内完了を目標に動いている。アスファルト部分は、11月ごろまでには御影石の舗装への復旧を完了する予定」と話す。

新宿区道路課も、「すでに昨年4月にそれ以上の工事は締め切っており、今年秋にかけてブロック舗装に戻す作業をやっていく」と話しており、ようやくMOA街のまだら模様も解消されそうだ。ただ、「道路調整会議で各企業者を調整して進めるが、新宿区にはいろいろな建物があり、いろいろな工事がある。下水道管の再構築も次はMOA街の隣の地区で始まる」ということで、今後もまだら模様の街路は不可避のようだ。

もう10年近く前だが、当時住んでいた近くの早稲田通りの歩道でも、アスファルトの箇所がかなり長期にわたってそのままだった記憶がある。

記事を書くに当たって改めて見に行ったが、ほとんどがきれいに敷きなおされていた。もっとも数か所、真新しいブロック舗装がはがされてアスファルトになっている個所もあり、鼬ごっこの感は否めない。

ある政令指定都市の土木技官にやや突っ込んだ話が聞けたのだが、「地方自治体の土木事務所は、歩道に凹凸があり老人などが躓いて転んだりするかもしれない、といった安全に関する懸念を強く持っていると思う」との見方を示した。

「たいていの日本人は美観よりも路面の平たん性を優先する。歩道に凸凹があって事故がある方が深刻なので、自治体はそちらの修理を優先する。とりあえず平らにしておけば、美観は後回しでいい、というのが本音じゃないか」と言う。

また長期的な傾向としては、「ブロック敷きはかっこいいが費用が掛かる。バブル時代は良かったかもしれないが、当時敷設したものがガタガタになっても直し切れなくなって、そのままになっているのが顕在化してきた。もうブロックをやめた場所も結構あるのだろう」とも話した。

私のように地面の美観にこだわる人がどれだけいるのかわからない。東亜道路工業の担当者は、「美観を問題にする住民の声はまれにある。弊社としても、きれいになっている道路を壊して、黒いアスファルトがあるというのは美観上よろしくないということは十分承知している」と話す。新宿区道路課も「たまにではあるが、いつ復旧するんだ、という声も寄せられる」と言う。

私のこだわりは、かつて新聞社のドイツ・ベルリン特派員を務めた経験があるからだろう。石畳の街路が当たり前の国だが、石畳の道の一部がアスファルト舗装になっている場所はあまり見なかった気がする。早朝から、一辺5㎝ほどの石を一つ一つ小槌でたたいて砂地に埋めていく作業をしている職人の姿をよく見たが、職人さえ確保できれば狭い範囲を石畳に戻すのは、日本の場合よりやりやすいのかもしれない。

街の美観と言えば、電信柱と電線に関しては問題となり、自然災害に備える意味からも、東京都は「無電柱化計画」に基づき、電線の地中化を進めている。中央区銀座などでは建物の高さ制限をして景観に気を配っている。

ただ、街の美観は路面の状態も一体となって視界に入ってくる。数年間、地面がまだら模様のままなのは、あまり快適とは言えない。道路工事は街の発展のために不可避とはいえ、もう少し地面の美観にも気を配ってもいいのではないか。