書籍 核融合炉入門 -プラズマエネルギーへの道-

岡野 邦彦さんの著書ご紹介


International Environment and Economy Institute

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書籍「核融合炉入門 -プラズマエネルギーへの道-(コロナ社)」を上梓しましたのでご案内します。


・著者:岡野 邦彦
・出版社:コロナ社
・発行日:2025年5月28日
・ISBN:9784339068382
・コロナ社の本書紹介ページ

以下「はじめに」より

核融合はかつては夢といわれてきたが、半世紀以上にわたる研究開発により、いまや手の届くところになった。ただし、最近の報道でしばしば伝えられるような10 年で実用化可能,というようなものではない。この本では、核融合技術開発を続けてきた専門家として、核融合開発の本当の現状と将来の見通しについて、わかりやすく解説する。

本書名を核融合入門でなく核融合炉入門としたのには意図がある。核融合の本として、原子物理やプラズマ物理の解説から順に書けば、核融合炉の話になるのは本の後半ということになりがちだ。本書では、それらの解説は最小とし、第1章のフュージョン炉の基本を読み終わるころには、核融合炉とはどんなものか、その概要はわかるようになっている。それ以後の章では、少しずつ内容を深め、範囲も広めながら、さらに詳細がわかっていく構成とした。

核融合とフュージョンの名称について

2023年6月に、「核融合エネルギー」の名称を「フュージョンエネルギー」に変更するとの政府発表があったので、それに沿って、本書の本文では、核融合の語は、原則として「フュージョン」と表記している。

目次

第1章 フュージョン炉の基本

1.1
フュージョンエネルギーとは
1.2
1億℃を閉じ込める方法(磁場とレーザー)
1.3
過去の開発史と日本の試験装置JT-60SA
1.4
国際協力で建設が進むフュージョン実験炉ITER
1.5
フュージョン炉のおもな要素技術
1.6
実用化に向けた開発計画とコスト
1.7
フュージョン炉の基本のまとめ

第2章 フュージョン炉に関するよくある疑問と回答

2.1
水爆のように爆発しないのか
2.2
福島の事故のようにならないか
2.3
放射性廃棄物で破綻しないのか
2.4
1億℃なのにお湯を沸かして発電するのか
2.5
フュージョン炉を造る材料はあるのか
2.6
フュージョン炉に関するよくある疑問と回答のまとめ

第3章 磁場方式フュージョン炉

3.1
閉じ込め磁場の構成
3.2
1億℃への加熱と電流の駆動
3.3
日欧の成功と米国の挫折
3.4
プラズマ性能の制約条件
3.5
磁場方式フュージョン炉のまとめ

第4章 資源量と燃料増殖の仕組み

4.1
燃料資源はどこにあるのか
4.2
燃料増殖:リチウムから三重水素を作る
4.3
最初に三重水素がなくても起動できる
4.4
資源量と燃料増殖の仕組みのまとめ

第5章 ITER計画の進捗と目標

5.1
ITER計画の進捗
5.2
実験炉ITERの仕様と構造
5.3
ITERの目標と達成の見通し
5.4
ITER計画の進捗と目標のまとめ

第6章 イノベーションの歴史と期待

6.1
プラズマ性能のイノベーション
6.2
超伝導コイルのイノベーション
6.3
ダイバータでのイノベーション
6.4
ブランケットでのイノベーション
6.5
加熱・電流駆動装置のイノベーション
6.6
遠隔保守のイノベーション
6.7
イノベーションの歴史と期待のまとめ

第7章 磁場フュージョン炉の概念設計と経済性

7.1
ITERで発電したら正味電力は出るか
7.2
フュージョン炉の概念設計
7.3
建設コストと発電コストの予測分析
7.4
磁場フュージョン炉の概念設計と経済性のまとめ

第8章 慣性(レーザー)方式フュージョン

8.1
レーザー方式の原理と特長
8.2
米国におけるレーザー方式の進展
8.3
日本の発明:高速点火法
8.4
レーザーフュージョン炉の概念設計
8.5
レーザー方式特有の技術課題
8.6
慣性(レーザー)方式フュージョンのまとめ

第9章 ベンチャーによる早期実用化の実情

9.1
いろいろなフュージョン反応
9.2
先進燃料フュージョン実現には高いハードルがある
9.3
民間投資に関する法的背景の視点
9.4
ベンチャーによる早期実用化の実情のまとめ

第10章 実用化に向けた開発計画

10.1
日本の開発ロードマップ
10.2
海外の開発計画
10.3
実用化に向けた開発計画のまとめ

第11章 今後に向けての提言

引用・参考文献

おわりに