「エネルギー基本計画の見直しに向けた提言」を公表
一般社団法人 日本経済団体連合会
KEIDANREN
(「週刊 経団連タイムス」より転載:2024年10月31日 No.3657)
経団連(十倉雅和会長)は10月15日、「エネルギー基本計画の見直しに向けた提言~国民生活・経済成長を支えるエネルギー政策の確立を求める」を公表した。同提言の検討に当たっては、エネルギー政策に関心の高い会員企業の役員クラスを対象に、「電力問題に関するアンケート」を実施した。提言の概要は次のとおり。
わが国は石油危機以来のエネルギー危機に直面しており、電力需要の増加など、多くの課題への対応が求められている。とりわけ、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現には、再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源の導入拡大の道筋を示すことが不可欠であり、それができなければ国内設備投資を制約せざるを得ない。エネルギー政策、気候変動政策、産業政策を戦略的に組み合わせ、国際競争力強化と持続的成長につなげていく必要がある。
1.現状認識と基本的な考え方
わが国は資源に乏しい島国であり、多様なエネルギー源のベストミックス追求が必要不可欠である。エネルギー政策の大原則となるS+3E注1)のもと、特定のエネルギー源への過度な依存を避け、レジリエントなエネルギー供給体制を構築することが求められる。
2.S+3Eを支える電源の確保
再エネについては、主力電源化に向け、低コスト・安定供給・事業規律の3点を満たす案件の導入を加速すべきである。
原子力・核エネルギーは、50年CNの追求と、科学技術立国を支える産業の維持を両立させるうえで、活用が不可欠なエネルギー源である。国策として、国が前面に立って取り組む必要がある。特に、リプレース・新増設がなければ、40年代以降、原子力の設備容量は急速に減少する(図表参照)。既設発電所の再稼働の加速とともに、革新軽水炉の建設を早急に具体化する必要がある。同時に、高温ガス炉・高速炉、さらには核融合炉の開発・実装に至るまで、時系列を持った取り組みが必要である。
火力については、CN実現の観点から依存度低減が必要である一方、安定供給を損なうことがないよう、円滑なトランジションに万全を期すことが重要である。
3.次世代電力ネットワークの確立
電源の確保に加えて、送配電インフラへの投資も重要である。計画的・戦略的に系統整備を進めるとともに、需要設備の立地誘導を図ること等が求められる。
4.次の10年に向けた電力市場のデザイン
目下、政府審議会で行われている過去10年の電力システム改革の検証の結果を適切に反映し、次の10年の指針とすることが肝要である。制度の適切な見直しや、プレーヤーの規律と質の確保が求められる。
5.燃料の安定的確保と熱源のトランジション
CN化に向けては、電力以外の対策も極めて重要である。化石燃料については、依存度低減を図りつつ、トランジション期の安定調達を確保するとともに、水素・アンモニア等のCN燃料活用を進める必要がある。
6.エネルギーシステムを支えるファイナンスの確保
大型脱炭素電源等の整備には、長期にわたり多額の投資が求められる。民間金融機関のリスクテイク能力を強化するとともに、トランジションファイナンスに対する一層の理解醸成を図る必要がある。
7.3Eに資するエネルギーミックス・NDCの設定
次期エネルギー基本計画においては、40年度のエネルギーミックスを示し、中期のエネルギー政策の道筋を描くことが望ましい。将来の不確実性の高まりを踏まえ、ミックスは複数のシナリオとして示すとともに、到達すべき目標とは異なることを明確化することが肝要である。
排出削減の道筋としては、イノベーションが効果を発揮することで将来に向けて加速度的に削減が進むとも考えられるが、次期NDC(Nationally Determined Contribution=国が決定する貢献)注2)については、国際舞台でわが国の野心を示す観点から、50年CNを直線的に達成する目標を掲げることが望ましい(35年度に13年度比60%、40年度に同73%の削減に相当)。こうした極めて野心的なNDCの達成に向けては、技術等の不確実性を踏まえ、柔軟に施策を展開していくべきである。
- 注1)
- 安全性(Safety)の確保を大前提とした、エネルギー安全保障・安定供給(Energy security)、経済効率性(Economic efficiency)、環境性(Environment)のバランス確保
- 注2)
- パリ協定に基づき、各国が国連に提出する必要がある温室効果ガス削減目標