「自分の頭で考える」学びの案内

書評:関口 美奈 著『13歳からのエネルギーを知る旅』


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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(「電気新聞」より転載:2024年3月29日付)

 日本ほど、エネルギー問題で辛酸をなめた国はない。太平洋戦争が勃発した原因は複数あるが、決定打となったのは原油輸入を断たれたことだ。しかしまた、日本ほどエネルギー問題に無頓着な国もなかなかない。石油も、石炭も、天然ガスも国土の下には埋まっていないというのに、電気はスイッチを押せばつくのが当たり前だと思っている人がほとんどだ。

 電気がつかないことが当たり前のこの国で、ついて当たり前という状態を確保するために、どれだけの投資と先人の苦労があったのか。それを維持するために我々のリスク管理はどうあるべきか。そうしたことを推し量り、考える力を「エネルギーリテラシー」と呼ぶのなら、それに欠ける議論が極めて多いのはなぜなのか。

 一つには、安全保障の問題は危機にひんして初めて意識されるという宿命があるだろう。先日、英国のスナク首相がテレグラフ紙に寄せた記事は「エネルギーの安全保障なくして国家の安全保障は守れない」という一文から始まり、ガス火力発電の必要性と支援政策を説明しているが、つい最近まで同国のエネルギー政策は気候変動対策に大きく重心を置いていた。それを変えたのは、ウクライナ危機を契機としたエネルギー価格の急騰や再エネの出力低下によるエネルギー危機の経験だ。

 二つには、エネルギー安全保障は、量の確保というよりも、価格の問題であり、これまで資源価格が高騰してもわが国が買い負けることにはならなかったことが指摘できる。わが国の経済にボディーブローのようにダメージを与えたとしても、供給途絶には至らなかったという経験が、人々の気持ちを緩ませるのかもしれない。

 しかし、スナク首相の言葉通り、エネルギー安全保障なくして国家の安全保障は守れない。エネルギーについて学ぶ機会が、教育システムの中にビルトインされていないわが国で、エネルギーリテラシーを向上させることが喫緊の課題であることは、関係者の共通認識となっている。

 最近、わかりやすくエネルギー問題を解説する本の出版が続いているのはその証左であろう。本書もその一つだ。エネルギー問題の伝道者(エバンジェリスト)として独立した本書の著者が目指したのは、基礎的な知識を得た上で「自分の頭で考えること」。4人のキャラクターの会話による展開は、網羅的で親しみやすい。入門の書としてお勧めしたい。


※ 一般社団法人日本電気協会に無断で転載することを禁ず

『13歳からのエネルギーを知る旅』
関口 美奈 著(出版社::KADOKAWA
ISBN-13:978-4046833600