各産業のCO2削減努力を授業する(1) 石油、製紙、製鉄


環太平洋大学客員教授

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ポイントを絞り、詰め込み過ぎない

 経済広報センターが、小学生向けに実施しているGIGAテキストでどのように産業別環境教育を行っているか。今回はそのポイントを紹介したいと思う。パワポのシートは各産業とも4、5枚に押さえている。あまりページ数が多いと何がポイントかがわかりづらくなってしまい、子どもたちの頭に残らなくなってしまう。しかし、厄介なのは、業界の専門家に見ていただくと、あれもこれもと追加されたり、細かな説明を付け加えられたりする。私が思うには、専門家からすると、少し物足りない程度がむしろちょうどいいようである。

石油会社のめざすカーボンニュートラルを教える

 では、具体的にどのようなことを教えているのか。
 まずは、石油のテキスト。日常生活のイラストを示し、石油がどのように使われているのかを探してもらう。石油が、動かす力や温める力に使われていることを理解してもらう、次に、油田からタンカーで運ばれ、私たちのところへ届くまでの過程を知ってもらう。その後に、「石油会社の未来に向けた取り組み」として、石油会社が各地でガソリンスタンド以外に、水素ステーション、EVステーションをつくっていること、石油会社が石油以外の自然エネルギーを活用し、地熱発電、太陽光発電、風力発電など環境を守りながら電気をつくっていることを紹介している。
 さらに次の文章のカッコに言葉を入れてもらう作業を行う。
 「石油会社のめざすカーボンニュートラルについて知ろう」とのシートでは、「これまで原油を原料として製品を作ってきましたが、これからは(CO2)があまりでない石油製品、(バイオ)系・(カーボンニュートラル)系・(CO2)フリーエネルギーの製品づくりへと努力し、社会全体のカーボンニュートラル効果に力をつくしています。」
 小学校高学年の児童に知ってもらうキーポイントは、こうした内容と分量でいいのではないかと考えている。

日本の紙づくりの高い古紙回収率と古紙利用率

 次に、製紙。これも石油のテキスト同様に、イラストを見て、紙で作られた製品を選び出してもらうことから授業が始まる。木材を細かくしたものから紙ができる過程と古紙から紙を作る過程を理解してもらう。また、日本の製紙会社は、紙の原料となる木を自ら育て、木を切った後も繰り返し木を植え、森林を減らさないようにしていることを教える。そして、最後は、世界と日本の古紙回収率を比べてみる。
 (世界各国の回収率、利用率)で(米国 66.3%,40.8%)、(ドイツ 79.0%、77.7%)、(中国 53.4%、63.3%)、(世界平均 58.7%、59.1%)であるのに対し、日本はどうなっているのかを児童に予想してもらう。正解は、回収率は76.9%、利用率は65.0%と圧倒的に高い。この数字を見せたうえで、感想を述べてもらい授業が終わる。

むだのない日本の鉄づくりを知ろう

 本稿の最後は、製鉄。町の風景のイラストの中から、鉄でつくられていると思うものに〇をつけてもらう。そして、鉄ができるまでを学ぶ。原料、製銑、製鋼、鋳造、圧延がどういう過程かを理解してもらう。
 そのうえで、鉄のリサイクルを学ぶページ。「鉄は(じしゃく)につくので、回収しやすく、リサイクルに適している。鉄は(100)%、何度でもリサイクルに適している。鉄は(100)%、何にでも何度でもリサイクルされて、新しい鉄鋼製品に生まれ変わる。製鉄所では、使用済みの(プラスチック)もリサイクルして原料の一部などとして使っている」とカッコの中を皆で読み上げながら埋めていく。
 その次のページは、むだのない日本の鉄づくり。日本を100とした場合の各国のエネルギー効率国際比較のグラフを見ながら、次の文のカッコに数字を入れていく。
 「日本の鉄づくりは研究開発が進み、世界でトップのエネルギー効率です。日本を100としたときの世界の国のエネルギー効率は、鉄の生産量が多い、中国(111)、インド(119)と、どの国も日本には及びません」
 そして、欄外の「読みましょう」で、こう解説している。
 「鉄を1トンつくるのに消費するエネルギー量を比較してみると、日本が省エネ世界ナンバーワンです。エネルギーの使用量が少なければ、それだけ地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素の排出量も少なくなります。日本の製鉄所では、コークス炉や高炉、転炉などから発生するガスを回収して、発電などに100%利用しています。このような省エネ設備を、ほとんどの製鉄所に設置し、むだのない鉄づくりをしています。また製鉄所で使った水も、90%以上再利用しています。」と説明している。このほか、日本の鉄鋼製品は世界トップレベルであることも説明している。
 授業を終えた子供たちの頭に、伝えたいキーワードが残っているように工夫するのが、こうした産業教育のコツだと思っている。

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