都市ガス業界のカーボンニュートラル化への取組み


The Japan Gas Association

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都市ガス業界のカーボンニュートラル化への取組み

 日本ガス協会は、2020年11月に、2050年のガスのカーボンニュートラル化に挑戦する旨を宣言し、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を発表した。続く2021年には「カーボンニュートラルチャレンジ2050 アクションプラン」を公表した。アクションプランの中で、トランジション期には徹底した天然ガスシフトと天然ガスの高度利用を図り、日本のNDC46%削減達成に貢献するとともに、脱炭素化技術の開発を進め、メタネーションによるe-methane(合成メタン)導入やバイオガスや水素の直接利用等の取組みにより2050年カーボンニュートラルを実現する道筋を示した。

図1.日本ガス協会 カーボンニュートラルチャレンジ2050アクションプランについて

都市ガスのカーボンニュートラル化を実現する「e-methane」

 天然ガスは化石燃料の中で最もクリーンなエネルギーであり、様々な産業分野や船舶分野での石炭・重油等から天然ガスへの燃料転換や高度利用により確実かつ大幅なCO2削減への貢献が可能となる。将来的には、天然ガスからe-methane等への転換を図ることで、ガスのカーボンニュートラル化を実現する。e-methaneの用途は都市ガスからの転換に加え、発電分野や国際的な規制強化が著しい船舶燃料としての活用など、更なる広がりが想定される。
 脱炭素化技術の開発においては、都市ガスを脱炭素化する主要な手段であるメタネーション技術の開発に取り組んでいる。メタネーションとは水素とCO2を合成する化学反応のことであり、それにより都市ガス原料の主成分であるメタン(e-methane)が生み出される。発電所等から排出されるCO2や大気中のCO2(DAC)等を回収し、エネルギーとして利用するため、燃焼時にCO2が排出されたとしても大気中のCO2量は変化せず、カーボンニュートラルに貢献する。

図2.メタネーションの原理について
出典:ガス協会作成資料

 e-methaneは民生・産業部門の約6割を占める熱エネルギーの脱炭素化に貢献し、電化が困難な高温熱需要等の脱炭素化も可能である。また、e-methaneは既存の都市ガス供給インフラ・利用設備、お客様のガス設備をそのまま活用することが可能であり、社会コストを抑制し、需要家の負担を抑えつつ、脱炭素の実現に貢献できる。また、高い強靭性を有する既存インフラを活用することで、レジリエンスの向上にも貢献する。e-methaneの早期の社会実装は、我が国の産業競争力・経済成長の強化およびCO2排出削減の観点からもその意義は大きいものと考える。
 2023年2月にはGX実行会議の「GX実現に向けた基本方針」において、再エネなどの他のエネルギーに加えて、e-methaneについても検討を進めるとの方針が示され、また最近では、経産省と米国エネルギー省主催で8月に開催された「日米CCUS/カーボンリサイクル・ワーキンググループ」においてe-methaneが紹介され、米国もe-methaneをネットゼロへの移行を進められる重要な手段と認識しているとの発言もあり、日本以外の国でもe-methaneへの期待が高まってきている。

社会実装に向けた取り組み

 安価かつ大量のe-methaneを導入するためには、大規模なe-methaneの製造設備とともに大量の水素が必要となるため、再エネ価格の安価な海外での製造は有力な選択肢と考えられる。中東、東南アジア、北米等複数の国で適地選定のための実行可能性調査が進められており、その一つとして、東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・三菱商事は、米国キャメロンLNG基地を活用した日本へのe-methane導入に向け、原材料調達やサイト選定の現地調査、関連制度の検討などを開始した。キャメロンLNG基地から、2030年に3社計1億8,000万Nm3-CH4/年のe-methane輸入を目指し、2024年度基本設計(FEED)開始、2025年度最終投資決定(FID)を計画している。

図3. 米国キャメロンにおけるプロジェクトのサプライチェーンのイメージ
出典:2022年11月11日 第9回メタネーション推進官民協議会 資料3-2 (経済産業省)

最後に

 このように都市ガス業界では、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けてe-methaneを早期に社会実装するために、技術開発や制度整備などの検討を業界一体かつ官民一体となって進めている。我が国の産業と経済を支えながら、同時に温室効果ガス削減にも貢献するe-methaneの普及へ向けて挑戦を続けている。