エネルギー価格高騰が再エネ投資を難しくする


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」より転載:2022年11月11日付)

 化石燃料価格が大きく上昇している。原油価格は比較的落ち着いているが、欧州の天然ガス価格は、2年間で約10倍に、石炭価格は約4倍になった。欧州諸国の電気料金も当然上昇している。化石燃料依存度と政府の助成額により上昇率は異なるが、英国は、1年間で電気と都市ガスを合わせた家庭用エネルギー価格が3倍になった。

 欧州ほどではないが、日本でも家計のエネルギー価格の負担は1年間で2割以上増えた。欧州ほどの上昇になっていないのは、日本向けLNG価格が欧州ほど上昇していないことと、燃料費調整制度のため燃料費の値上がりが全て小売り料金には転嫁されず、加えて遅れて反映されるためだろう。電力会社による調整費制度の見直しが続いているため、今後エネルギー価格はさらに上昇することになる。

 化石燃料価格が上昇しているので、一旦設備を設置すれば変動費がほとんどない太陽光、風力などの再エネ電源のコスト競争力は相対的に上昇している筈だが、話はそう簡単ではない。エネルギー価格がインフレを引き起こし、資材の価格が上昇し始めているからだ。

 太陽光、風力発電などの再エネ設備は、大量の資材を必要とする。米エネルギー省の資料によると、太陽光発電により10億キロワット時の発電量を得るのに必要な資材量は、アルミ680トン、鉄鋼7900トン、銅850トン、シリコン57トン、ガラス2700トン、プラスチック210トンなどだ。同じ発電量を得るために原発では、鉄鋼160トン、銅3トンなどが必要になるが、必要資材量の桁が異なっている。

 エネルギー価格の上昇は、資材の価格に影響を与えつつある。世界銀行の資料に記載があるアルミと銅の価格は、コロナ禍の2020年半ばから今年9月時点までに共に1.5倍になった。値上がりは、これからも続くだろう。

 加えて、欧州委員会は再エネ設備の資材の購入を強権国家、中国に依存しない法案の整備を進めている。脱強権国家を実行すれば、資材の価格はさらに上昇する。結局、原料、資材利用の視点でも原子力の活用が必要になるのだろう。