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2050年のカーボンニュートラル実現に向けた都市ガス業界の取り組み

「e-methane(合成メタン)への期待」


一般社団法人日本ガス協会 企画部エネルギー・環境グループマネジャー


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カーボンニュートラル実現に向けた都市ガス業界の取組みの道筋

 世界的な『脱炭素』の流れを受けて、2021年4月に、日本の削減貢献目標として2030年の温室効果ガス排出について、これまでの目標であった2013年度比26%削減から大幅に引き上げて、46%削減とし、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくとの新たな方針が示された。
 それに先立ちガス業界においては、2020年11月に公表した「カーボンニュートラルチャレンジ2050」において「2050年までにガスのカーボンニュートラル化の実現を目指す」ことを宣言し、実現に向けたシナリオとして、「①徹底した天然ガスシフト・天然ガスの高度利用」「②ガス自体の脱炭素化」「③CCU/CCSや海外貢献等の取り組み」を示し、2050年までに都市ガスの90%をe-methane(カーボンニュートラルメタン・合成メタン)に置き換える目標を掲げた。続く2021年6月には「カーボンニュートラルチャレンジ2050 アクションプラン」注1)を公表し、将来の脱炭素化の実現に向けて、足元ではCO2排出削減となる天然ガス転換やカーボンニュートラルLNGの活用等により、CO2排出総量を減らし、並行して脱炭素化技術の開発を進め、メタネーションによるe-methane導入や水素の直接利用等の取組みによりカーボンニュートラルを実現する道筋を示した。


出典:カーボンニュートラルチャレンジ2050アクションプラン(2021年6月10日 日本ガス協会HP)

e-methaneへの期待

 e-methaneとは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)から「メタネーション技術」を用いて合成されたメタン(CH4)のことである。メタンは燃焼時にCO2が発生するが、発電所や工場などの排出ガスからCO2を分離回収したCO2と相殺されるため、e-methaneの利用では大気中のCO2は増加しないことから、グリーン水素もしくはブルー水素を用いれば、環境に負荷を与えることはない。
 2021年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」注2)においては、2050年に向けて成長が期待される14の重要分野が選定され、「洋上風力・太陽光・地熱」や「水素・アンモニア」と並んで、熱分野の脱炭素に貢献する分野として「次世代熱エネルギー産業」として、「合成メタン(e-methane)」に関して記載がなされた。また、第6次エネルギー基本計画においても、再生可能エネルギーの最大限の普及拡大と合わせた電化の拡大及び水素や合成メタン等の脱炭素化燃料を活用することが織り込まれる等、我が国のエネルギー政策においてもカーボンニュートラル実現に必要なエネルギーとして位置づけられている。


出典:経済産業省 資源エネルギー庁 ホームページ スペシャルコンテンツ

メタネーションの果たす役割

 日本においてカーボンニュートラル化を推進するためにはコスト削減が大きな課題となる。第43回基本政策分科会において地球環境産業技術研究機構(RITE)が試算した「2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析(中間報告)」注3)においては、想定した7つのシナリオのいずれをとったとしても2050年における我が国の電力コスト(限界費用)が大幅に上昇することが示された。電力コストを抑えるためには様々なイノベーションを実現する必要があるため、その一つの抑制策として既存インフラの徹底的な活用があげられる。e-methaneは、水素とCO2を合成して生成され、都市ガスと同じように扱うことができる。メタネーション設備や水素製造設備は新設する必要があるが、LNG冷却設備や貯蔵タンク、輸送用のLNG船、託送用の導管、お客様が利用しているガス機器やガス設備など既存のインフラ・設備をそのまま利用することができる利点がある。
 脱炭素化へのトランジション期においては、天然ガスから段階的にe-methaneの導入量を増やすことで社会コストを抑えつつシームレスに脱炭素化を進めることができる。
 東京ガス株式会社や大阪ガス株式会社、東邦ガス株式会社などのガス事業者も国内での実証試験を進めている。さらに東京ガスや大阪ガスは海外においても大規模のメタネーション設備を建設する予定であることをメタネーション推進官民協議会で報告しており、国内外において活発に事業が動き始めている。
 民生・産業部門の約6割を占める、熱エネルギーの脱炭素化への貢献が期待され、電化が困難な高温熱需要等の脱炭素化も可能であり、製造工程で大量にCO2が発生する産業界からの、CO2の有効利用、カーボンリサイクルへの期待は大きく、国内においては、オンサイトメタネーションの実証が進んでいる。株式会社IHIはアサヒホールディングスの子会社のアサヒクオリティーアンドイノベーションズへのメタネーション設備の実証試験に取り組んでおり、株式会社デンソーは愛知県の工場内のガス機器から排出されるCO2のメタネーション循環利用に関する実証を行っている。船舶分野においても、e-methaneによる船舶のゼロエミッション化に向けた検討を進めており、供給サイド・需要サイド双方で、e-methaneの社会実装に向けた様々な検討・取組みが進行している。

メタネーションの課題

 e-methaneは回収したCO2をリサイクルしているためカーボンニュートラルと解釈できうるが、e-methaneのCO2削減実績を排出者と利用者のどちらに計上するか、整理する必要がある。またその環境価値を商品であるガスと共にどのように移転するか、制度やルールを検討していく必要がある。2022年3月にメタネーション推進官民協議会のCO2カウントタスクフォースの「合成メタン利用の燃焼時のCO2カウントに関する中間整理」において排出削減の二重カウントを認めないことを前提とした制度等については、「CO2の削減実績を利用者側に帰属させる」方向性が示された。一方、原排出者・回収者側に十分な誘因が働かなければe-methaneの製造が進まずに、市場が形成されないため、e-methaneのバリューチェーンに関わる事業者にインセンティブが働くような補完的な制度設計も必要となる。こうした検討を踏まえ、今後国内においては法令やルールが整理される見込みである。また、海外でe-methaneを合成して日本に輸送するなど、国を越えて環境価値が移転するケースについては国レベルの交渉が必要であり、官民が一体となって国家間のルールを作り、国家間交渉を進めていくことが重要となる。

メタネーションへの今後の期待

 エネルギー資源の乏しい日本において、人々の生活や産業を支えるためにエネルギーを安定的に供給しつつ、経済的にカーボンニュートラル化を進めるためには、e-methaneのみならず、複数のエネルギーの選択肢をもって、それぞれのエネルギー特性を踏まえた検討を進める必要がある。e-methaneに関しても技術開発やコスト、CO2カウントルール整備等の課題があるが、官民が一体となって課題を解決し、日本におけるエネルギーの安定供給とエネルギーコスト低減、カーボンニュートラル化を段階的に、確実に推進していく必要がある。

参考図書:「メタネーション 都市ガスカーボンニュートラル化の切り札 e-methane(共著:秋元圭吾、橘川武郎、エネルギー総合工学研究所)」(エネルギーフォーラム)

注1)
https://www.gas.or.jp/gastainable/CNAP/CNAP.pdf
注2)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html
注3)
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/043/043_005.pdf