食品の値上げ分は食品ロスの削減で軽減
丸山 晴美
消費生活アドバイザー
小麦価格の上昇で、製粉、製パン各社は年内2度目の値上げを発表しています。原材料、資源価格、輸送費、人件費、円安などさまざまな要因が複雑に絡み合う中で、商品の値上げのスパンが短くなってきています。原材料を輸入に頼っているものや、加工の度合いが高いものほど値上げ幅が大きくなっています。
特に食品は私たちの生活に欠かすことができないものですので、上手にやりくりをする必要があります。一方で、見落としがちなのが食品ロスです。環境省の「食品ロスを減らすために私たちにできること」によると、家庭から発生する食品ロスの量は、年間約280万トンで、4人家族の世帯は毎年約6万円の食品を捨てている、と見積もられています(令和3年度の家計調査による)。二人以上の世帯の全国平均の食費が月7万5,761円。そのうちの5,000円は食品ロスになっていると考えるのであれば、食品ロスを減らすことで、値上げ分も軽減できると考えることもできるでしょう。
家庭からの食品ロスの原因は大きく分けると3つあり、「直接廃棄」「食べ残し」「過剰除去」になります。これらの原因を少しでも減らす工夫を心掛けることが、家計にも環境にも優しい生活になります。
表には、それぞれの原因と工夫が記載されていますが、それらについて私が考えるコツやアドバイスを追加、補足していきたいと思います。まずは、表を見ながら思い当たるものが多い項目はどれかを考えてから参考にしてみてください。
「直接廃棄」を減らす工夫
買い物の際はメモを取り、必要なものからカゴに入れ、安くても調理方法がわからない食材の購入は見送りましょう。そして、購入時は手前から商品を取ることで、消費期限の短い食品のお店側での廃棄を減らすことができるので、手前取りを心掛けましょう。消費期限が短いものは、次の買い物までに使い切れる分を購入。もしくは、小分けや下味を付けて冷凍し、使う分だけ解凍をして調理をします。
食費節約が上手な方は、冷蔵庫の残り食材で1食作って、買い物を1日伸ばす工夫をしています。買い物へ行く前に冷蔵庫の在庫を確認することはもちろんのこと、あと1日買い物へ行くのを伸ばせないかといったチャレンジをしてみてもいいでしょう。その際、早く使い切りたい食材をキーワードにして検索しましょう。例えば、「豚ひき肉」 「ピーマン」 のように、スペースを空けて入力すると該当するレシピを簡単に検索できます。
「食べ残し」を減らす工夫
作り過ぎて余ったおかずは、リメイクがおすすめです。炒め物が余ったら、汁ごと片栗粉でとじてから春巻きの皮に包んで揚げる。煮物が余ったら、天ぷらにする。など方法はいろいろあとあります。思いつかない場合は、レシピサイトやアプリで「リメイクしたいおかず名」 「リメイク」と検索すると参考になります。
放置していて忘れてしまう原因は、冷蔵、冷凍共に、奥に入り込んで隠れてしまうからです。早く使い切りたい、食べきりたい食材は、手前に置くようにしましょう。また、透明な容器に移し替えて、中身がわかるように保存をするといいですね。
調理の失敗は、ちょっとした工夫で防ぐことができます。加熱し過ぎて焦げてしまったという経験は誰にでもあるものです。焦げの原因は、火力が強すぎたり、鍋から目を離していたことがほとんどです。コンロに鍋を掛けたら、鍋から離れないようにすることと、煮込みなどで鍋から離れる場合、沸騰までは鍋から離れず、沸騰したら弱火にしてタイマーをかけて、コンロを使っていることを忘れないようにしましょう。コンロによっては、センサーで温度を感知して自動的に火を弱めたり、消してくれるものもあります。
反対に、生焼けや生煮えだった場合は、レンジで加熱することで解決することがほとんどです。
「過剰除去」を減らす工夫
野菜の芯は、スジや太い繊維部分のみを除去することで、可食部を増やすことができます。また、細かく刻んでお肉に混ぜ込んだり、煮込むなど過熱調理をすることで柔らかくなるものがほとんどです。YouTubeといった動画サイトには、野菜の切り方や魚のさばき方といった基本的な切り方を教えてくれるコンテンツもあるので、「食材名」 「切り方」といったキーワードで検索してみましょう。
そして、皮ごと食べられる野菜は皮ごと食べるようにしましょう。調理時に出る皮は刻んで、きんぴらやかき揚げ、スープに入れるなどして食べきるようにしましょう。
食品の値上げに際しても、食品ロスを減らすことで、家計と環境への負担も減らすことができるでしょう。