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PG&Eの送電線に起因する森林火災への対応


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 最近アメリカの新聞が、「西部地域がドライシーズンに入るから、森林火災に要注意」と報じていた。地球温暖化の影響とも言われるが、ここ数年、カリフォルニア州の夏が極端な乾燥状態になることが多く、森林火災が多発するようになっている。その原因には、風で揺れる樹木の枝の摩擦によるもの、たき火の燃え移り、煙草のポイ捨てなどがあるが、その他に、森林に設置された高圧送電線と木の枝が接触して発火し延焼する事例も見られる。


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 この事例については、山本所長が2020年1月15日のブログで紹介しておられるが、520万の需要家を持つ電力・ガス事業であるサンフランシスコに本拠を置くPG&E(Pacific Gas & Electric)社は、2018年に起きた自社の送電設備起因の森林火災によって、死者も出るような被害を受けた集落からの訴訟、あるいは、気象条件を見て火災を予防するために、該当する森林を走る高圧線の送電を一時的に止める必要が出た時に、予め広報して行う計画停電が、需要家への通知が遅れたりするなど、適切に行われなかったことに起因する事業者が被った損害への賠償請求訴訟の額が膨大なものになり、倒産状態になった。会社更生法で救済されて事業を継続してきた。

 だが、気候条件は年々悪くなっているため、送電線起因の森林火災が起きる可能性は高くなる。この状況に対応するために、PG&Eは思い切った対応策実施に踏み切った。それは、森林地帯を走る高圧送電線の設備を耐火性の高いものに取り換えるのではなく、送電線そのものの利用を止め、道路に埋設した送電線に切り替えるというものだ。同社は25,000 マイル (40,234 km)の架空送電線を運用しているが、その30%、7,500マイル(12,070km)が火災を起こしやすい森林地帯を走っている。

 その架空線撤去の第1段階として、Santa Rosa地域で4マイル(6.4km)の送電線地下埋設工事を2021年9月に完成させている。これによって、それが送電する11,000の需要家の安全性が大幅に改善されるということだ。効果はそれだけではない。この送電線は、森林火災の可能性のない地域にある需要家や公共施設にも電力を供給しているため、これまで、森林火災の可能性の高いときに実施された計画停電の巻き添えになって、森林火災が影響しない地域も停電するという状況にあったが、それがなくなった効果も大きいと評価されている。

 2021年7月に、PG&Eは1万マイル(1.6万キロ)の送電線地下埋設の将来計画を示した。それによると、カリフォルニア州の北部、中部地域の7万平方マイル(約181,000㎢キロ)で、森林火災の起きやすい区間の高圧送電線を順次地下埋設させるとしている。全体の3分の一に相当する3,600マイル(5,800キロ)の道路への埋設を2026年までに完成させるようだ。火災のリスクが高い地域から着手しているのだろうが、ここ当分はPG&Eが森林火災への警戒態勢を緩めることは出来ないだろう。

 高圧線の地下埋設工事には、行政や地域住民の了解を得るのにも多くの時間が割かれるし、工事完了後も、他業種関連の埋設工事による不慮の事故を防止するための標識や巡回も必要となる。送電線の埋設と並行してガス導管の設置も行い、投資の効率化を図ってはいるようだが、電気料金の上昇を抑制するのに苦労するだろう。州政府からの支援があるかも知れないが、長期に亘る送電線の地下埋設工事が経営に与える影響は大きい。
 PG&Eによる送電線の道路下埋設が成功裡に進展すれば、同様の悩みを抱える全米の電力事業者も少なくないから、この方式が普及する可能性があるかもしれない。