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COP26で注目を集めた森林宣言

~森林減少に歯止めをかけることができるのか~


林野庁計画課海外林業協力室 室長


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 2020年5月にFAOは5年毎に行う世界森林資源評価を公表しました。2010~2020年における世界の森林面積の変化は年平均470万ha減っています(図1)。以前に比べると減少スピードは収まっているものの、一年間に九州(368万ha)よりも一回り大きな面積が減少しています。また、470万haという値は、森林減少面積から森林増加面積を差し引いた数値ですが、森林増加面積と森林減少面積を共に示すと図2のようになります。森林増加面積を差し引いていない森林減少面積は2010~2020年では年平均1,100万haとなります。そのほとんどが天然林であり、九州の3倍の大きさにもなります。


図1 世界の森林面積の変化(1990年-2020年)
資料:FAO「世界森林資源評価2020」のデータに基づき林野庁作成


図2 世界の森林増加・減少面積(1990年-2020年)
資料:FAO「世界森林資源評価2020」のデータに基づき林野庁作成

 世界の森林減少については、1970年代後半以降、熱帯林が激しく減少していると国際的に問題となり、1992年の地球サミットで大きく取り上げられ、森林条約を作るべきか否かの議論にもなりました。1990年代、2000年代には、国連の場で、持続可能な森林経営に関する議論に相当のエネルギーを費やし、2017年には国連森林戦略計画(UNSPF)が作成されるまでに至りました。持続可能な森林経営とは何か、について、国際的な方向性の一致を見たと捉えることができます。
 しかしながら、国際的に政策的な議論は進んだ一方、実際の森林減少は図1、2のとおり止まっていないのが現実でした。森林減少が起こっている途上国の現場では、森林の管理体制(ガバナンス)の不十分さが指摘され、財政基盤の弱さを補うため途上国が森林保全を行うために必要な資金を得る枠組みを整えることが重要との流れとなりました。2010年ごろから大きな流れとなったREDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減等)の取組です(REDD+については、当方の前任によるコラム(2019/12/19 途上国の森林減少と地球温暖化―REDD+は熱帯林を救うかー)に詳しく書かれているのでご参照ください)。REDD+の成果としては、緑の気候基金(GCF)による「結果ベース支払い」(森林減少による排出を削減した量に基づく支払い)が、2019~2020年にかけて中南米7ヶ国(ブラジルなど)、アジア1ヶ国(インドネシア)の案件に対しなされています。

 地球規模の共有財産とも言える森林の保全のためには、森林減少の生じている国が森林保全に真摯に向き合うこととドナー国が支援を惜しまないことが重要であり、その動きを後押しする国際政治での強いメッセージが不可欠です。2014年の国連気候サミットにおいて、2030年までに天然林の減少・劣化を終わらせることなどの目標を掲げた「森林に関するニューヨーク宣言」が打ち出されています。ただ、同宣言の参加国数は我が国を含む40ヶ国にとどまり、熱帯林の最大保有国であるブラジルや世界最大の森林保有国であるロシアは参加していません。


農地が山の上まで広がり森林が消失している
(エチオピアにて、筆者撮影)

 2021年10月31日から気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が英国グラスゴーで開催されました。議長国である英国のジョンソン首相は、4つの重点分野として「Coal(石炭)、Cars(自動車)、Cash(資金)、Trees(森林)」を上げてCOP26に臨んでおり、世界リーダーズサミットの一環として首脳級の「森林・土地利用イベント」を開催しました。
 この「森林・土地利用イベント」では、

2030年までに森林減少や土地劣化を食い止め好転させることにコミットし、世界的な森林保全とその回復を含む取組を強化する「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言」
森林分野の気候変動対策に公的資金の確保を約束する「グローバル森林資金プレッジ」
②の一環としての「コンゴ盆地森林の保護・持続可能な経営の支援に関する共同声明」
森林減少を伴わない持続可能な農産物サプライチェーンの構築に向け協力を進めていく「森林・農業・コモディティ貿易(FACT)対話」ロードマップ

等について発表されました。
 ①は、我が国、英国、米国、EU、独、仏、加など先進国に加え、インドネシア、コンゴ民主共和国など多くの熱帯林保有国が参加し、参加国数が140を超え、参加国の森林は世界の森林の90%以上をカバーしました。先に紹介したニューヨーク宣言には加わらなかったブラジルやロシアも参加したのは注目に値します。
 ②は、①の後ろ盾となるものです。ニューヨーク宣言では資金プレッジがなかったのに対し、②では12ヶ国により2021~2025年の間に120億ドルという大きな額の拠出を約束しました。森林分野を対象にした、世界のドナーのほとんどが参加したプレッジは初めてでもあります。我が国は、世界リーダーズ・サミットにおける岸田総理の演説の中で約2.4億ドルの資金支援を行うことを表明しました。
 ③は、②のうち地域を限定したものです。アマゾンに次ぐ世界で2番目に大きい熱帯林にもかかわらず、アマゾンや東南アジアほど支援の手が入っていないことから、コンゴ盆地の森林にスポットライトを当てております。
 ④は、世界の森林減少の原因の7割以上が農地開発と言われていることが背景にあります。2021年に入り英国がリードしFACT対話が始められております。

 森林減少に歯止めをかけることは総論として世界のほとんどの国が賛同するものの、その実行は、経済問題、貧困問題などが絡まり、簡単ではないのが現実です。COP26の森林・土地利用イベントで発表された一連の宣言等は、参加国の多さ、資金プレッジも組合せた実行性の高さ、農業・土地利用も含むスコープの広さなど、これまでになく画期的なものです。将来の世代から今回のグラスゴー宣言が世界の森林保全にとってターニングポイントであったと言ってもらえるよう、各国が真摯に向き合い森林減少に歯止めをかけていくことが強く求められています。



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