事実の歪曲による英国の気候変動騒ぎ


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

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 バイアスのかかった情報によってさんざん脅された結果、人々は気温上昇、死亡率、山火事などのファクツを甚だしく誤認しており、そのせいで気候変動を心配している。それを浮き彫りにする調査が英国で発表された

 調査をした会社はSavanta ComRes。委託したのは地球温暖化政策フォーラム(GWPF)である。対象は英国の成人であり、調査は2021年2月20-21日に実施された。

英国人の多くは気候変動を心配している

 まず、気候変動をどのぐらい心配しているか、という質問の結果を見よう。

 回答者の28%が気候変動について「非常に心配している」、42%が「かなり心配している」と答えている。7割の人々は心配している訳だ。なおその一方で、18%が「あまり懸念していない」、6.4%が「まったく懸念していない」と答えている。

若い人が特に心配している訳では無い?

 若い人が温暖化対策に関心が高い、と言う報道が多いが、このアンケートではとくに世代間の差は大きくなかった。若い人たちは、年配の世代よりも気候変動について「非常に心配している」と言う割合はむしろ低かった。

地球の気温上昇は事実誤認されている

 さて以下が本題である。回答者に一連の質問をして、気候変動に関する知識をテストした。

 最初の質問は、「過去150年間で、地球の平均地球温度はどのくらい上昇したか?」というもの。 回答は「10°C」、「5°C」、「1°C」のいずれかを選択できる。

 「1°C」と正解したのは回答者のわずか21%。35%が「5°C」と答え、16%が「10°C」と答えた。事実誤認は甚だしい。

自然災害による死亡率も事実誤認されている

 次の質問は、気候関連の自然災害による死亡率について。自然災害には、洪水、異常気象、極端な気温、地滑り、干ばつ、山火事がある。

 OFDA / CRED国際災害データベースのデータによると、死亡する人の数は1920年代以降95%減少した。正解したのは8.8%のみで、12%が95%増加し、42%が25%増加したと回答した。

 災害が激甚化していると煽る情報が溢れかえっているせいで、事実誤認が蔓延しているようだ。

山火事が増えたと事実誤認されている

 米国西部とオーストラリアでの山火事が頻繁に報道されて、山火事が増えているという認識を生み出している。 「 オーストラリアは気候危機によって火刑に処されている」などの見出しや山火事の劇的な映像は、人々の認識に影響を与えている。

 しかし観測データは、世界の山火事は増えていないことを示している。NASAの衛星観測によれば、 2003年以降、世界の年間焼失面積は約25% 減少した。減少した主な理由は森林の管理が進んだためだ。

 山火事の影響を受けた総土地面積は2003年以降どう変化したか?という質問に対して、多くの回答者(39%)が「25%増加した」と回答した。「25%減少した」と正解したのは16%に留まった。なお、50%減少した、と答えた人々も10%いた。

海面上昇については比較的よく理解している

 世界の海面上昇率については、比較的よく理解されていた。 王立学会によると、過去10年間の平均海面上昇率については、34%の人々が3.6mm/年と正解した。20%は0.36mm /年、12%が30.6mm /年と回答した。

食糧生産については比較的よく理解している

 最後の質問は食糧生産に関するもの。国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、世界の食糧生産は2005年から34%増加した。回答者の39%は、この期間に食糧生産が増加したことを正しく特定できた。

 ただし、20%の人々は、食糧生産が減少したと回答した。

日本はどうなのだろうか?

 以上のように、気温上昇、山火事、自然災害についての英国の人々の事実誤認は甚だしい。海面上昇や食料生産についても、正解が多いとはいえ、大きく間違った回答も多い。

 日本で同じような調査を実施したらどうなるか、興味あるところである。毎日のように災害が激甚化している、気候危機だ、などと煽られているから、おそらく、殆ど同じ傾向が出るのではなかろうか。

 温暖化に関するNHKの報道ぶりが歪んでいることは以前に書いた通りである:

・NHKが煽る温暖化報道を統計でファクトチェック! 
 https://agora-web.jp/archives/2049824.html
・NHKの温暖化予測はどこまで本当か?
 https://agora-web.jp/archives/2049845.html
・「温暖化の暴走」を煽るNHKの暴走
 https://agora-web.jp/archives/2049955.html

 政府とメディアは、何よりもまず、国民に正しい情報を伝えることが責務であろう。