10回目の春 ~復興への槌音~

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 3月14日(土)JR東日本は、震災後不通となっていた常磐線富岡―浪江間20.8㎞の運転を再開しました。

 震災後、最長で広野―原ノ町間で不通となった常磐線は、その後平成26年の広野―竜田間の運転再開を皮切りに徐々に運転区間を広め、10回目の春を迎え、ついに全線復旧となりました。品川・上野―仙台間が一本につながり、普通列車は途中駅での乗り換えが必要なものの、特急「ひたち」では1日3往復が直通運転されます。


画像提供:PIXTA

 新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、全線開通を祝うイベントは中止や延期となりましたが、再開当日の駅の様子は全国にテレビ報道されました。常磐線を利用した多くの住民の笑顔に感慨を覚えた方も少なくないと思います。
 またこの日、「平成最後の新駅」として2019年4月20日に開業したJヴィレッジ駅がイベント開催などに合わせて営業する臨時駅から常設駅に格上げとなりました。
 鉄道と並び地域の移動を支える高速道路については、常磐自動車が、震災当時未整備だった区間を含め2015年に仙台までの全線で開通しており、今も4車線化や新たなインターチェンジの整備が進んでいます。地域の交通インフラが整うことで交流人口や定住人口の増加による復興の加速化が期待されます。

 また常磐線の再開に合わせ、双葉町、大熊町、富岡町ではそれぞれの帰還困難区域の一部などで避難指示が解除されました。

双葉町: 3/4に避難指示解除準備区域の両竹、中野、中浜地区221haと帰還困難区域のJR双葉駅周辺19ha
大熊町: 3/5に帰還困難区域のJR大野駅周辺28ha
富岡町: 3/10に帰還困難区域のJR夜ノ森駅および町の名所の桜並木を含む周辺道路1130m

 唯一全町避難が続いていた双葉町でも、町が掲げる2022年春の帰還開始目標に向け、復興は新たな段階を迎えました。町が中野地区に整備中の復興産業拠点には建設業、製造業、サービス業など12件17社の立地が決定しています。今夏には県の災害伝承館、町の産業交流センターがオープン予定となっており、復興祈念公園の一部も完成します。今秋開業を目指すホテルの建設計画もあり、町民の雇用につながると期待されています。

 浜通り地域の住民帰還は、避難指示解除、商店や病院施設の再開・新設などを経て、徐々に増えてきています。楢葉町では、昨年末の時点で、世帯数67%、人数で57%の居住率となっています。他方、楢葉町の北側、富岡町から浪江町、ちょうど常磐線が不通だった区間と重なる町は、思うように帰還が進んでいるとは言えません(前述の通り、双葉町は2022年春帰還開始予定)。
 しかし、大熊町で住民登録のない居住者が住民登録がある居住者を大きく上回っていたり、富岡町にアパートが多数新設され企業の社宅に使われ始めているなど、帰還率に表れない居住者の増加が進んでおり、ランチタイムの食堂やコンビニエンスストアはかなりの賑わいを見せています。
 現状は、福島第一原子力発電所の廃炉事業や、国の中間貯蔵施設建設事業に関わる人が多いと推測されますが、前述の双葉町の復興産業拠点への進出企業や、浪江町に誕生した「福島水素エネルギー研究フィールド」、3月末に全面開所を迎えた南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」などは、交通インフラの利便性向上と相まって帰還の促進だけでなく、新たな人の流入をもたらすものと思われます。

 まだまだ課題は多く、復興への道のりは長いですが、明るい話題は着実に増えてきています。
 今後も浜通り地域の歩みに注目していきたいと思います。