大規模駐車場に太陽光発電
山藤 泰
YSエネルギー・リサーチ 代表
効率の高いエネルギー消費施策を中心にした研究をしている米NPO、ロッキーマウンテン研究所、の共同創設者・名誉会長であるエイモリー・ロビンスとは永いつきあいだ。10年以上前に彼が、「ショッピングセンターなどの広い駐車場は、太陽光発電を設置する場所として最適であるだけでなく、夏には地表温度を下げる効果が大きいから、地域の環境改善にも貢献する」、と教えてくれて以来、これが日本でも普及するだろうと思っていたが、これまでその具体例を知る機会はなかった。メガソーラー設置が自然環境に悪影響を与え、景観を阻害するとされ、さらに、適地も少なくなっているいま、なぜ駐車場の利用がされないかが不思議だった。その疑問を解消してくれたのが、「1,200台分の駐車場型メガソーラーシステムを導入」として村田製作所が3月27日に出したプレス発表。
その内容を紹介すると、1,200台分の駐車場を活用したシステム容量約2.4MWのメガソーラーシステムを、同社生産子会社の岡山村田製作所(瀬戸内市)の社有駐車場地に設置し、稼働を開始したが、引き続いてさらに500台分の駐車場を活用し、2021年度中にシステム全体の発電能力を約1.5倍に拡張するというものだ。発電所は、両面発電パネルを採用しているのが特徴で、駐車車両、地面などから受ける反射光による発電で、設置面積あたりの発電効率を向上させている。稼働済み発電システムでは、年間1,698トンのCO2削減効果があるという。発電された電力は全量固定価格買取制度(FIT)の価格で売電されるとのことだ。
この大規模プロジェクトが生まれた背景には、企業が地球温暖化(気候変動)防止に向けた活動をすることが、その企業の社会的評価を高くするようになったということもあるだろう。
先行事例があるかも知れないと思い検索してみると、2015年6月に、双葉電子工業が長生工場(千葉県長生村)の従業員用1,200台収容の駐車場に、カーポート(駐車場)型メガソーラー(最大出力約1.7MW)を設置し、発電事業を開始していた。ここからの電力はFITで全量が売電されている。さらに2016年2月に、茨城県の阿見町にある観光型大規模商業施設である「あみプレミアム・アウトレット」(全国9個所ある中の一つ)で、1MWの太陽光発電パネルが500台分の駐車場に設置されていた。2017年12月には、千葉県酒々井町(しすいまち)にある酒々井プレミアム・アウトレットで、第2弾の発電設備1MWが運用を開始している。自然エネルギー財団のレポートに解説されていたのだが、パネルの下には人や自動車が出入りすることから、駐車場へ設置する架台には建築基準法が適用されるために設備コストが上がらざるを得ないとのことだ。この設置時期であれば、まだFITで電気を高く売ることもできたはずだが、プレミアム・アウトレットは、地域貢献としてエネルギー地産地消を重視し、全量自家消費にしている。
国交省の数字によると、平成29年度末の駐車場(月極駐車場、住宅の車庫、小規模な路外駐車場等を除く)は520万台分を超えている。500台分で1,000kWとして単純計算すると、1,000万kWを超える太陽光発電潜在力がある。この範疇に入る東西の高速道路会社のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)にある駐車場総数の規模は大きいが、ここには今後、電気自動車充電設備や水素燃料充填設備が設置されるだろう。駐車場に太陽光発電を設置すれば、その利用価値は高いはずだ。昨年確認した段階では、高速道路の遮音壁や空き地などに太陽光発電が設置されてはいるが、SAやPAの駐車場スペースに設置された事例はまだないようだ。
規模の大きい太陽光発電からのFIT制度に基づく売電に対しては入札が行われるようになったが、さらには、現在のFITから、市場価格に一定のプレミアムを上乗せして売電価格とするFIP(Feed-in Premium)になることが予定されており、売電での収益を上げにくくなる可能性がある。これを機に、ショッピングセンターや工場などの大規模駐車場に、目に見える地域貢献として、自家消費用の太陽光発電が増えるのではないかと考えている。