国会議員の軽率なツイート


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」からの転載:2020年2月1日付)

 新年早々、ある衆議院議員が「ドイツ、再エネが化石燃料を上回る。電カシェアは46%、太陽光では買い取り価格は1kW時当たり5ユーロセントぐらいになっているそうだ。日本は2030年でも再エネ22~24%、太陽光は送電系統への接続を阻まれて、あまつさえ出力抑制。そして環境大臣の地元で石炭火力を新設」とツイートしていた。

 ドイツの電力事情を誤解している方のようだ。再エネの買い取り価格が安くなっているので、電気料金が下がっているような書きぶりだが、ドイツの家庭用電気料金は世界一、30ユーロセントを超えている。日本の1.5倍だ。固定価格買い取り制度(FIT)による負担額上昇に悩みを深めたドイツ政府は、14年FITを原則廃止し、事業用太陽光などは入札と市場で売却した価格に上乗せ額を支払うフィード・イン・プレミアムに制度を変更した。

 結果、再エネの買い取り価格は卸価格基準になったので下落したが、14年までに導入された設備からの買い取り価格負担は最長20年続き、減ることはない。19年の消費者の負担額は1kW時当たり6.41ユーロセント(7.8円)、19年度の日本の負担額2.94円の2.7倍だ。新設設備の買い取り額が下がっても、電気料金が下がるわけではない。発電以外に送電安定化費用も必要だ。

 ドイツの発電に占める再エネ比率は約5割になったが、そのため再エネの出力制御量も増えている。電力の輸出入を行っている周辺国を含めても、どうしても需要が付かない時には制御するしかない。18年の再エネの制御比率は2%だが、19年第1四半期に風力の制御比率は7%に達した。九州電力の18年度の制御比率、0.9%より一桁多い。

 ドイツの石炭・褐炭発電量は減少しているが、シェアは今でも日本並みの30%ある。全廃予定は38年だ。ドイツと異なり、周辺国とは送電線もパイプラインも連系していない日本が、供給国が分散されている石炭を諦めれば、安全保障上のリスクは大きくなる。正確なデータに基づき多様な観点からエネルギーを考えることが要求されるのではないか。軽率なツイートだ。