電気自動車の航続距離、充電時間の問題が解決されるかも


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 急速に普及しつつある電気自動車(EV)だが、充電時間が長く、航続距離が短いという、従来の自動車に比べてかなり使いにくいという課題がまだ解消されてはいない。現在EVに利用されている蓄電池はリチウムイオン電池が主流だが、この問題解決に向けた技術開発がなされているとはいえ、電池の素材を変えなければ解消は難しいとされている。だが、つい最近、英国のUniversity College London(UCL:ロンドン大学)と中国のChinese Academy of Science(中国科学院)が開発成果を発表したスーパーキャパシターの性能を見ると、EV用の電源としての問題点を解消するものになる可能性を示唆している。

 コンデンサーという名称がよく使われているが、キャパシターはこれと同じもので、極めて早い充放電を繰り返すことが出来るが蓄電容量が非常に小さい蓄電器だ。これを数多く積層することによって、蓄電池としては蓄電容量が小さすぎて使えないものの、ある程度の蓄電容量を持たせたものが、スーパーキャパシターと呼ばれ、通常の蓄電池の充放電を支援するものとして実用化されている。蓄電池駆動のEVや電車などの場合、発車や急加速の際には短時間に大きな電流を蓄電池からモーターに流す必要があり、逆に、回生電力でブレーキをかけるときには、発電機として作動するモーターから蓄電池に流れる大きな回生電流を支障なく受け入れなくてはならない。しかし、現在使われている蓄電池では急速な電流の出し入れが難しいため、このスーパーキャパシターを併用し、急激な電流の変化を一時的に吸収させることによって、蓄電池の充放電性能不足を補い、両者が一体的に機能することによって、満足できるだけの加速、減速ができるようになっている。電流変化のバッファー(緩衝)機能を担っているということだ。

 上記の2組織が共同開発したのは、スーパーキャパシターに使う素材だ。発表時に提示されたのは、ジェル状の電解質が6センチ角の柔らかい電極二枚で挟まれた薄膜状のもの。これ一枚で数十個の発光ダイオードを灯すことができ、耐久性があり、折り曲げ出来る柔らかさと安定性を持っているとのこと。従来のものの10倍の蓄電容量がある。これを180度折り曲げても性能に変化はなく、五千回の充放電をしても蓄電能力は97.8%を維持している。この電解質は炭素原子が蜂の巣構造に集積したグラフェンでできていて、液状ではないために発火、爆発の可能性は低い。そして、この新開発のスーパーキャパシターを積層すれば、大きな蓄電容量を持ち、急速な充放電が可能で、それに安全性も兼ね備えた新しい蓄電池を開発できるとしている。


University College London、Chinese Academy of Science

 これをEV向けの蓄電池として開発すれば、現用の蓄電池と同じ蓄電容量を設定できるだけでなく、フル充電に要する時間を10分程度に短縮することが可能になり、携帯電話に使う小容量の蓄電池に利用すれば、2分の充電で1日継続的に使えるようになるという説明もされている。素材には稀少金属とか産地が偏在するものが使われていないため、商品化に成功すればコストも高くはならないだろう。気になるのは、この研究資金が中国政府から出されていることだ。今後の商品化動向を見守る必要があるかも知れない。