地球温暖化対策と森林


林野庁森林利用課 森林保全推進官

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 我が国の森林は、国土の保全、水源の涵養、木材の生産など、国民生活や国民経済に大きな貢献をしています。今回は、そのなかでも、地球温暖化対策と森林の関わりに焦点を当ててみていきます。

 「地球温暖化対策計画」(2016年5月閣議決定)は、パリ協定や我が国が国連に提出した約束草案を踏まえ、我が国の地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するための計画です。計画では、我が国の温室効果ガス削減目標について、国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比26.0%減の水準にするとの中期目標を示すとともに、各主体が取り組むべき対策や国の施策を明らかにしています。また、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことを位置付けており、我が国が地球温暖化対策を進めていく上での礎となるものです。

 同計画での森林の位置づけをみてみましょう。2030年度の森林吸収量の目標は約2,780万CO2トン(※ 京都議定書における森林吸収量の計上ルールを準用)となっています。これは、我が国の2013年度総排出量の2.0%に相当する量です。この森林吸収量には伐採木材製品(HWP)を含んでいます。HWPは2013年から森林吸収量の一部として取り扱われるようになりました。森林の樹木が伐採された後も、木材製品として利用されている間は、引き続き炭素をストックし続けていることを評価しています。

 同計画では、目標達成のため、

必要な間伐の実施や自然環境の保全にも配慮した路網の整備、針広混交林化や主伐後の再造林、荒廃した里山林の再生
計画的な治山事業の実施や森林病虫獣害の防止
森林の境界の明確化や土地所有者などの情報整備、森林・林業の担い手の育成や確保
全国植樹祭を通じた普及啓発や企業による森林づくり、森林環境教育

などを進めるとしています。

 木材や木質バイオマスについては、「再生産可能であり、炭素を貯蔵する木材の積極的な利用を図ることは、化石燃料の使用量を抑制し二酸化炭素の排出抑制に資するとともに、持続可能な森林経営の推進に寄与する」として、住宅はもとより非住宅建築物への木材利用、木質新素材の研究・開発や実用化、木質バイオマスのエネルギーや製品としての利用、木材の良さについての理解の醸成などの措置を講じるとしています。

 また、J-クレジット制度を着実に実施し、国内の多様な主体による排出削減対策や吸収源対策(省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの活用、適切な森林管理など)を推進することや、REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等)を積極的に推進し、世界の森林分野における排出の削減と吸収の確保に貢献することも明記されています。

 2018年のCOP24では、関連イベントの中で、議長国ポーランドのイニシアティブにより、「気候を守るための森林に関するカトヴィツェ閣僚宣言」が発表されました。同宣言では、パリ協定の長期目標の達成に向けて、森林及び木材などの林産物による地球規模での貢献を強化する行動を加速することを宣言しています。また、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した「1.5℃特別報告書」(2018年10月)や「土地関係特別報告書」(2019年8月)では、持続可能な森林経営が森林の炭素蓄積を維持し高めること、木材が炭素を長期間貯蔵しエネルギー集約型の材料を代替することで他のセクターのCO2排出を低減すること、REDD+が地域社会や生物多様性などに対して多様な相乗効果を有していることが記述されています。

 このように森林は、今後とも地球温暖化対策に重要な役割を果たしていくことが期待されており、我が国としても必要な施策を総合的に推進し、引き続き森林吸収量を確保していくことが重要です。