ハリケーンは強くなっていない

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(英 Global Warming Policy Foundation(2019/12/05)より転載
原題:「TROPICAL HURRICANES In the age of global warming」)

 2017年には、北大西洋のハリケーン活動はことさら激しかった。さらにハリケーンからの経済的損失は、ほんの数十年前と比べてもずっと大きくなっている。こうしたできごとは、一日24時間の途切れることのないニュース報道とあいまって、地球温暖化がハリケーンを以前より頻繁で強力にしているという主張を改めて台頭させている。こうした考えは、ハリケーンが暖かい水からエネルギーをもらうのだという発想に基づいている。海水の温度が上がれば、ハリケーンの強度は増すというわけだ。さらにハリケーンからの経済損失がほんの数十年前に比べてもずっと大きいのは、被害を受けやすい沿岸部分に富が集中して都市化が進んでいるからなのだ、とされる。だが実際のデータは何を物語っているだろうか?

 ハリケーンの長期トレンドを評価する問題の一つは、19世紀以来の観測手法が丸ごと変わってしまったということだ。1940年代までは、データは船舶の航海記録や場当たり的な地上観測だけだった。大西洋で航空機観測が始まったのは1944年だが、人工衛星やブイによる系統的な全数観測が行われるようになったのは、やっと1970年代になってからだ。結果として、20世紀半ば以前のハリケーンの多くは、まったく記録がない。また観測されたものも、最高風速が過小に記録されている。本当の根本的なトレンドを見極めようとして、いくつか研究が行われ、それが2013年第五次評価報告でIPCCにより慎重に検討された。その判定は明確だった。

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熱帯性ハリケーン:地球温暖化の影響(PDF)

【 著者紹介 】
 ポール・ホームウッドは産業界の会計士としてキャリアを築いてきた。2011年以来、気候とエネルギー問題について著述している。

解説:キヤノングローバル戦略研究所 杉山 大志

 人為的な地球温暖化のせいでハリケーンや台風が強くなっている、とよく報道される。しかしこれは事実ではなく、IPCCもそんなことは言っていない、と筆者は指摘する。
 GWPFによる論文「熱帯性ハリケーン:地球温暖化の影響」の山形浩生氏による邦訳。

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