海洋プラごみ対策が世界で加速!日本も対応策

日本企業の技術は課題解決のポテンシャル秘める


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2019年7月号からの転載)

 プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な問題になっています。今回は、各国の対策動向や日本の取り組みを紹介します。

外資系ホテルではプラスチック製ストローの代わりに紙製を使うところも

外資系ホテルではプラスチック製ストローの代わりに紙製を使うところも

海洋プラスチックごみ問題

海洋から採集されたマイクロプラスチック(環境省資料より)

海洋から採集されたマイクロプラスチック
(環境省資料より)

 世界では少なくても年間800万トンのプラスチックごみが海洋に流入しています。このままの状態が続くと、2050年には海洋のプラごみの量が重量ベースで魚の量を超えると予測されています(Neufeld,L., etal. 2016)。また、海鳥などがプラごみを食べて死亡するケースもあり、生態系にも悪影響を与えています。
 国際廃棄物協会(ISWA)は、「海洋プラスチック汚染の75%は中国などにおける不法投棄によるもので、海外から中国に輸出され、処理できないものが河川、海洋に流れている」と指摘しています。海洋などに流れたプラスチックは分解されず、紫外線や波の力などでもろくなり、小さな破片の「マイクロプラスチック」になります。それを取り入れた魚などを食べ、人体に入ってくるリスクも指摘されています。
 マイクロプラスチックは2つに分類されます。1つは一次マイクロプラスチックと呼ばれるもので、洗顔料や工業用研磨剤などに使用されているポリエチレンなどのビーズ状の小さな粒子(マイクロビーズ)がそれに当たります。もう1つは、環境中に流れ出て5mm以下になったプラスチック破片で、二次マイクロプラスチックと呼ばれています。

第三国の廃プラ輸入規制

 世界の廃プラスチック(プラごみ)の4~5割を受け入れていた中国が17年、輸入規制措置を打ち出しました。それまで日本は、国内で処理しきれないプラごみ年間150万トンをリサイクル資源として輸出し、その多くを中国が受け入れていました。
 中国政府は同年7月、「外国ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を発表し、その年の12月末、非工業由来の廃プラ(生活由来の廃プラ含む)8品目の輸入を禁止しました。翌18年12月末には、工業由来の廃プラ(プラスチック生産とプラスチック製品加工の過程で生じる熱可塑性の加工くず、切れ端、仕損じ品)についても輸入を禁止しました。
 この規制を受けて、日本の廃プラの輸出先はタイ、マレーシア、ベトナム、台湾などに移っていきました(図1)。しかし、東南アジア諸国でも、廃プラの輸入を一律禁止にしたり、輸入制限を強化したりする動きが出ています。

図1 日本の廃プラの国別輸出量の比較

図1 日本の廃プラの国別輸出量の比較
出所:グローバル・トレード・アトラスをもとに日本貿易振興機構(JETRO)作成

 今年5月10日には、有害な廃棄物の国際的な移動を規制するバーゼル条約の締約国会議で、リサイクルに適さないプラごみを輸出入の規制対象に加えた同条約の改正案を採択しました。改正案は日本とノルウェーが共同提出したもので、プラごみに関する初の国際的な法規制です。改正により、有害廃棄物に指定されたプラごみは、相手国の同意なしに輸出できなくなります。日本を含めた締約国は、プラごみの発生量削減だけでなく、国内でのリサイクル処理能力の強化など、国内で循環させていくことが求められます。

各国の動き、日本の対応策は

 欧州連合(EU)議会は昨年10月24日、海洋生物保護のため、EU市場全体で使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案を賛成多数で可決しました。法案成立にはなお手続きが必要ですが、EUは2021年までにこの法律を施行する見通しです。
 フランスは2020年1月1日以降、使い捨てプラ容器(タンブラー、コップ、皿など)の使用を原則禁止する方針です(生物由来の素材を50%以上使用したプラ容器は例外)。イタリアも2020年1月1日から、マイクロプラスチックを含有する化粧品の販売、マーケティングを禁止し、違反した場合は罰金が課せられます。こうした規制は今後、欧州など各国に広がっていく見込みです。
 また、プラごみによる海洋汚染を食い止めるため、対策に乗り出す企業が世界的に増えています。昨年10月、コカ・コーラやアパレル大手H&M、化粧品メーカーのロレアルなど約250の企業・団体が2025年までにプラごみをゼロにする共同宣言に署名しました。署名した企業や団体は、2025年までに商品のプラ包装をすべて再利用やリサイクル、堆肥化できるものに変更する計画です。
 日本では、環境省が、小売店へのレジ袋有料化義務づけなどを盛り込んだ「プラスチック資源循環戦略」を策定し、「リデュース」「リサイクル」「再生材バイオプラ」「海洋プラスチック対策」「国際展開」「基盤整備」に重点的に取り組んでいく方針です。
 また、経済産業省は今年5月7日、海洋プラごみ問題の解決に向け、海洋中で微生物によって水とCO2に分解される「海洋生分解性プラスチック」の開発・導入普及ロードマップを策定しました。海洋生分解性機能に関する新技術の開発、新素材や代替素材の開発など、官民一体で取り組むべき今後の課題と対策をまとめています。
 日本企業によるプラスチック代替素材やリサイクル技術は、世界のプラごみ対策に貢献できるポテンシャルを持っており、化学メーカーやベンチャー企業に事業化の動きも出ています。
 6月28、29日に大阪市で開催されるG20(20カ国・地域)サミットでは議長国である日本が、海洋プラごみ問題を主要議題として、各国に実効的な対策を促す国際枠組みの構築を目指します。
 国連環境計画(UNEP)によると、日本は1人当たりのパッケージ用プラスチックごみの発生量が、米国に次ぎ世界で2番目に多い(図2)。消費者である私たちも、それぞれがライフスタイルの中でプラごみ削減に努めたいものです。

図2 各国の1 人当たりプラ容器包装の廃棄量

図2 各国の1 人当たりプラ容器包装の廃棄量
出所:Adaoted from Geyer,Jambeck,and Law,2017