廃熱を減らす
山藤 泰
YSエネルギー・リサーチ 代表
この6月に閣議決定された「エネルギー白書2017」に目を通していて、日本の実質GDPとエネルギー効率の関係を示した図表に目がとまった。白書の第2部、第一章、第一節135ページにあるのだが、日本が急速にエネルギー効率を向上させてきたことが分かりやすく示されている。2011年度以降については、東日本大震災後の節電意識も大きく貢献しているとのことだ。(白書から図表を拝借した)。
これだけ効率が向上したのだから、世界でもトップだろうと思ったのだが、意外なことに、産業構造転換の影響があるのか、英国がこれを上回る高い効率を示しており、ドイツが日本に次いで3番目に位置している。主要国の中でもっともエネルギー効率を高くするほどのさらなる努力を傾注することが、エネルギー自給率が低い日本にとって、エネルギー安全保障にも関わる重要な課題であることは自明のことだろう。ただ、日本は乾いた雑巾を絞るようなもので効率向上の余地がないという表現もある中で、さらにエネルギー効率を上げるにはどうすべきかを考えなければならない。これまでエネルギー効率を上げようとする対象や関心が主として電気を消費する機器にあったように思えるのだが、これからは熱の損失を少なくすることにも注力する必要がある。エネルギー機器は、その機器が目的達成のために使い切れなかったエネルギーを熱として放出する。この熱が何か他の目的に利用されれば排熱利用と言うことが出来るが、それでも使い切れないエネルギーが出てくるのを避けることはできず、それは最終的に廃熱となって捨てられてしまう。この廃熱を極力少なくする技術なり使用法がさらに推進されなくてはなるまい。
排熱を利用することでエネルギー効率を高める代表的なものとしてコージェネレーション(熱電併給ーCHP)がある。エンジンで発電機を駆動して発電するときの発電効率は30~50%程度であって、熱として排出される量が多い。この熱を回収して給湯、冷暖房などに使うことができれば、総合効率は80%を超える。「冷房もできるの」と尋ねられることもあるが、熱で駆動する吸収式冷凍機がある。この効率の高さ故に政府が強力なコージェネ推進策を準備している。
https://www.ace.or.jp/web/works/works_0010.html でコージェネの現況、https://www.ace.or.jp/web/law/law_0020.php?Kiji_List で補助策を見ることができる。
ここで留意しなければならないのは、コージェネが発電量に応じて出す熱を十分に回収できるように、電気と熱の利用がバランスするようにしないと、本来利用できる熱が捨てられることになるといことだ。本欄で4月5日に述べた、熱の遠隔輸送方式などの利用も今後普及することが期待される。
この熱利用は、熱の温度が低いものでも利用できれば有効性が高まるが、その見地から興味ある技術の開発・商品化をNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)がこの5月16日に発表している。吸収式冷凍機は温水を使って作動する一種のヒートポンプだが、95℃の温水排熱について、従来は75℃までの熱しか回収できなかったところを、より低温域の51℃まで熱回収できる(冷水入口12℃→出口7℃、冷却水入口27℃→出口33℃の仕様の場合)一重効用ダブルリフト吸収冷凍機「DXS」の開発に成功したというものだ。この技術を使ったものが既に商品化されているというから、コストもそれほど高くなってはいないのだろう。
今後もこのような熱利用技術の進歩が生まれることを期待している。