既存ダム活用の水力発電(その3)
既存ダムの嵩上げとピーク発電
竹村 公太郎
認定NPO法人 日本水フォーラム 代表理事
前号に続き、既存ダムを活用して水力発電について述べていく。
既存ダムの嵩上げ
既存ダムの有効利用には、ダムの嵩上げがある。
10~30メートルのダム嵩上げは技術的には簡単で、全国各地で実施されている。既存ダムの下流部にコンクリートを貼りつけて高くする方法や、青森県の津軽ダムのように既存ダムの下流部にもっと高いダムを造る、という方法がある。
新規に造るダム事業では、その事業費に占める3分の2から4分の3は水没する方々や地域の公共施設への補償となっている。既存ダムではその大元の補償は終わっているので、費用的には有利となる。
現在のダム嵩上げは、治水能力を高めるのが主な目的であるが、これを水力発電に応用していけばよい。
小ダムを造ってピーク発電
最後にもう1点。既存の大きな本ダムの下流1kmあたりに、高さ30メートルクラスの小さなダムを造る。そうして、本ダムから1日のうち一番電気を使う午前10時から3時ころに、ドーンと水を流して電力を供給するピーク発電をするのだ。本ダムから一気に下流に放流された水は、下流の小ダムで一時的に貯めて、ゆっくり24時間かけて下流部に水を供給していけばよい。
効果
国直轄の多目的ダムと県管轄のダムすべてに発電機をつけ、ダム運用変更することで、仮定の計算ですが全国で200万kWの電力を増やすことができる。ダム嵩上げで170万kWがプラスで想定される。全部で370万kWの増加となる。
現在の水力発電のシェアは9%であるが、がんばれば30%くらいにはなる。日本列島にはどこにも川があり、その川毎で分散型の水力発電が出来る。この分散型がいいのだ。東京などの大都市には、大発電所から大きな電力を送らなければならないが、地方の中核都市クラスの電力はそれぞれの地域の水力で賄える。
縦割りをのり超えて
今までは電気は経済産業省の管轄、河川は国土交通省の管轄、とはっきり分かれていた。経産省は、国交省のダムを対象に電気を作ろうという概念はなかった。もし、そのように思っても、国交省の役人が上から目線で許認可してやる、と言う態度では事業は動かない。国交省自らがエンジンになり、主体になって水力発電を本来業務としてやらなければならない。
どこの省庁も自分たちの役割があり、よその行政に手を出さない、という社会システムが徹底している。縦割り行政は、物を作るときは分担して非常に効果を発揮したが、施設が完成してそれを有効に使う段階では邪魔になる。完成した施設は国民の共有財産である。それを最大限有効に使うために、関係行政機関が縦割りを超えて知恵を出し合って欲しいと願っている。