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第8回 電機・電子業界は〈前編〉

電機・電子温暖化対策連絡会 議長/パナソニック株式会社 品質・環境渉外総括 名倉 誠氏


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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――日本経団連、そして電機・電子業界としての自主的な温暖化防止の取り組みである「低炭素社会実行計画」について、2015年度フォローアップ調査(2014年度実績)の結果を公表されています。低炭素社会の実現に向けた、これまでの取り組みの成果と課題は?

名倉:電機・電子業界の低炭素社会実行計画は、産業界による自主的取り組みとして2013年度から推進しています。対策の柱の一つが、生産プロセスのエネルギー効率改善/排出抑制です。実行計画における生産プロセスの目標は、エネルギー原単位の改善率について、年平均1%の達成を推進するものになります。達成する目標の水準は二段階に分かれ、まず、「フェーズⅠ」では、基準年度である2012年度比で2020年度にエネルギー原単位を7.73%改善し、「フェーズⅡ」では、さらに、2030年度に同16.55%の改善を目指しています。(図1)(図2)

 また、電気製品を製造する生産プロセスの省エネは電機・電子の中で閉じた取り組みですが、他の業界、例えば自動車、航空機、鉄道や住宅などもエレクトロニクス化が進んでいますので、もう一つの柱として、高効率で低炭素化に繋がる製品・サービスを提供することにより、それら他業界のグリーン経済への貢献も果たしています。実際、電機・電子業界は、産業・業務・家庭・運輸からエネルギー転換(発電)にいたるまで、あらゆる分野に製品・サービスを提供しています。重電から家電、部品から製品・ソリューションまで幅広く、異質な事業構造の集合体なのです。このように多種多様な業態・事業で構成されていることから、電機・電子業界は、国内外の経済動向の変化に関係して、生産活動量の振幅も非常に大きいのが特徴です。

図1図1 電機・電子業界「低炭素社会実行計画」の取り組み[拡大画像表示]

図2図2 生産プロセスのエネルギー効率改善/排出抑制[拡大画像表示]

 現在、エネルギー原単位改善率の2015年度の実績をまとめているところですが、14年度までの実績を見ると、エネルギー原単位改善率年平均1%という目標ですが、初年度の13年度は基準年度比で7.08%、2014年度は10.63%となり、前年度比では3.82%の改善を見せて、好調に進んでいます。

――目標を上回って改善されていますね。

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名倉:日本の産業部門全体のCO2排出量の内訳では、電機・電子はわずか3%程度です。この3%の中に、電機・電子関連の企業は7百社以上いると言われています。このうち、4つの団体の会員企業でも4百数十社有り、現時点ではそのうちの約7割の企業に実行計画へ参加いただいている状況です。今後、さらに、賛同いただける企業を増やすことが今後の課題ですが、14年度までの段階では、順調にエネルギー原単位は改善してきていると思います。多種多様な業態・事業の生産活動を行っている業界ですが、全体としての目標を持ちながら自主的な取り組みを推進していくことが大きな役目であり、課題です。

 これまでの我々業界の取り組みの進捗状況については、昨年度(2015年度)の政府審議会「産業構造審議会 産業技術環境分科会 地球環境小委員会 電子・電機・産業機械等WG」において、「製品・サービスによる削減貢献の算定は先進的で評価する」、「国際競争力の向上、環境と経済を両立したグリーン成長を望む」といったご意見や評価をいただきました。特に嬉しかったのは「電機・電子業界は、自業界だけでなく幅広い業界へ製品・ソリューションを提供し、その省エネ・低炭素化に貢献している点を評価する」と、他産業への貢献も高く認識していただいたことです。

――持続可能な社会に向けて、電機・電子業界が期待されていることは何だと思いますか?

名倉:自らのグリーン成長の実現だけでなく、これまで以上に、他業界を含むグリーン経済の貢献を進めることではないでしょうか。また、掲げている目標や課題に対して素直に、パナソニックの中では「愚直」と言いますが、ひたすら頑張ることもやはりやっていく必要があります。目標である生産プロセスのエネルギー原単位改善については、多種多様な業態・事業の集合体ですので、それがどういうファクターでこの結果を生んでいるかという構造も明確にして、取り組みを進めていきたいと思います。

 また、イノベーションの重要性を常日頃から考えています。その日がその日がイノベーションのスタンスでいることが大事です。お客様やユーザーが何を望んでいるか。特に、現代は“満足感”や“達成感”、“安心・安全”を求める時代で、必ずしも“環境”が前面に出て来くるわけではありません。ですから、そうした前提にある“環境”をクリアして、お客様やユーザーの満足を実現することが、持続可能な社会につながっていくのだと思います。

 長期的なビジョンでもある地球規模での温室効果ガス排出量の半減を実現するためには、エネルギー需給の両面で、大幅な「効率向上」と「低炭素化」が必要になります。我々の業界が関わる分野は非常に幅広く、電機・電子機器やシステムの革新的な技術開発が重要になります。技術革新により、中長期的なCO2排出削減に貢献していくのだという使命を感じています。

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図3 エネルギー需給両面での革新的技術開発

後編に続く)

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