第1回 自動車産業は「技術革新」と「総合的アプローチ」がカギ〈前編〉
日本自動車工業会 環境委員会温暖化対策検討会主査/日産自動車グローバル技術渉外部 担当部長 圓山 博嗣氏
インタビュアー&執筆 松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
――その他の燃費改善技術は?
圓山:車体の軽量化、タイヤの転がり抵抗の低減、空気抵抗の低減など様々な燃費改善技術があります。こうしたいろいろな取り組みが、CO2対策として積み重なります。軽量化については、炭素繊維などの新しい材料もコストの低減が進んでいます。さらに新しい材料もイノベーションにより出てくる可能性があります。“軽量化”して悪いことは何もなく、全てに対して効果があります。
――低炭素の取り組みの対象がオフィスや研究所にも拡がりましたね。工場での省エネの具体例は?
圓山:省エネ法が定める年率1%のエネルギー消費量削減目標に向けて努力義務を果たさなくてはなりません。ベスト・アベイラブル・テクノロジー(BAT)を各社採用して積極的に排出削減に取り組んでいます。工場の設備はそんなに頻繁に更新しないので、日常的に低炭素化するとなると省エネ活動が重要になります。
工場では有効に設備を使い、一番効率の良い運転条件にして、なるべく稼働率を上げるなど、各社は環境方針として目標値を設定しています。日本自動車工業会(以下、自工会)の目標設定として、2020年までに90年比で28%削減の目標を掲げています。最新の低炭素技術の設備を入れて、プロセス改善を行います。
例えば、車の塗装ではこれまで中塗りと上塗り両方の塗装後に設けていた焼付け工程を、中塗りと上塗りを連続して塗装することで一度に集約する「3ウェット塗装」という工法を採用してきています。また、高性能ボイラーの導入やモーターのインバーター化等も進めています。その他、照明のLED化や空調の効率化、無駄な電気を使わない取り組みも進んでいます。各社とも社長方針で環境への取り組みとして、ISO14001には全従業員参加ですから、環境に対する意識も高まっていると思います。
――再生可能エネルギーなどのグリーン電力に関する取り組みは?
圓山:各自動車メーカーが社の低炭素削減目標のもとグリーン調達をやっています。やはり世界がグリーンになっていかなければいけないという社会的責任のもと、多少コストはかかってもグリーン電力を使う努力をしています。目標を達成したら、その分をクレジット化してどこかに売ることはせずに、次の目標を深堀りする努力に向けています。
(後編に続く)