『雇用創出、林業振興、地域活性化』の成功モデル

青森・津軽の木質バイオマス発電所


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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50年間地域に貢献する発電事業をめざす

 津軽バイオマスエナジーを成功モデルに、岩手県花巻市でも木質バイオマス発電事業が今年12月に開始予定です。津軽でのこうした取り組みは、発電事業に関心を持つ自治体の間で話題になり、すでに40を超す自治体から見学がありました。
――今後計画していることは? 
 「バイオマス発電は発電だけだと、発電効率は30%弱にとどまります。投入するエネルギーの70%程度は熱として捨てられます。その熱をうまく活用することが課題です。来年には発電所のそばに温室ハウスを2、3棟つくり、トマトや葉物の栽培を検討しています。これで40%の熱を使えます。残りの40%は、煙突の先から水蒸気として出る熱で、これを利用できないか弘前大学と共同研究しています」(大山氏)
 間伐材は山林からの搬出コストが高いことから、山に放置されることが少なくありません。木質バイオマス発電の原料として間伐材を利用することは林業再生につながると期待されています。一方で、木質バイオマス発電所の建設ラッシュで、間伐材など丸太の需要が拡大し、発電所間で木質燃料の奪い合いが起きていると伝えられています。
――固定価格買い取り制度(FIT)に基づく木質バイオマス発電による電気の買い取り期間は20年間。その先の展開は?
 「先々、間伐材の利用が困難になることが予想されます。燃料を地元の木材で確保するため、今から山を買うことを検討しています。一般に植樹から伐採まで数十年を要しますが、20年程度で伐採できるような樹種の植樹を検討しています」(中村氏)
 大山氏は「50年間の事業継続を目指し、事業そのものが街に喜ばれる形にしていきたい」と話します。地元の人たちとのつながりを大事にして、工夫しながら林業振興と地域活性化を図っていこうとする強い意思が感じられます。