太陽電池の限界をブレークスルーする新技術!
FUTURE-PV Innovation
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
――ナノワイヤー太陽電池のメリットは何でしょうか?
「シリコンで画期的に効率を上げることが可能になることです。シリコンは地球上で2番目に多い元素で、無尽蔵に存在します。市場価格も非常に下がっており、日本の産業に“ものづくり”に戻ってきてもらい、競争力の強化につなげたい」
――ビジネスにメリットが大きいわけですね
「中国メーカーの寡占状態を打破できない状況です。研究開発は大学に任せて、多くの日本企業はお客様に向き合ったソリューションビジネスに軸足を移しています。米国や欧州も10年先は今の技術をベースにビジネス戦略を描いています。2030年以降を見越した技術開発をしなければ、技術は滞ります。企業が市場に出すには10年かかりますので、5年先には結果を出したい」
既存火力より安い電気に挑戦
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「革新的太陽光発電技術研究開発」は、2014年9月、太陽光発電の新たな技術開発指針「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」を策定しました。中国メーカーのシェア拡大や固定価格買い取り制度の導入など、太陽光発電を取り巻く状況の変化を踏まえ、発電コスト目標は、2020年に14円/kWh、2030年に7円/kWhにすることを目標にしています。
「太陽光の強さを表す『1sun』という単位をワット数で表すと1000W/m2ですが、1sun(集光なし)の状態で、変換効率28%が達成できれば、5倍から10倍の低倍率集光を利用することにより変換効率30%の達成は可能であり、それを実証していく予定です。超高効率発電が実現できれば、1kWhあたり7円は可能になります」(小長井氏)
変換効率向上による発電コスト低減は、得られる発電電力が増えるだけでなく、初期費用や土地賃借料などの運転維持費などのコスト削減などにも有効です。2030 年以降を見据え、将来有望な新技術を支援していくことが重要だと実感しました。