100年先を見据えた太陽光発電の役割と価値
―化石燃料の輸入コスト削減効果は3兆円超―
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
100年先を見据えた太陽光発電
経済産業省資源エネルギー庁による「PV100年構想」では、太陽光の長期安定電源化に向けた取り組みの柱になるのは、太陽光の「低コスト化に向けた取り組み」、「発電事業の長期安定化」、「出力管理の高度化・自立化」です。
まず「低コスト化に向けた取り組み」として、①太陽光発電システムの導入費用と買い取り価格の低減、②技術開発―が鍵となります。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のロードマップによると、2020年に発電コスト14円/kWh、2030 年に発電コスト7円/kWhを目指すとしています。
「発電事業の長期安定化」については、①毎日の発電量の確認など保守・メンテナンスの重要性、②中小規模設備の適切な設計・施工と管理の必要性、③太陽光発電設備の施工に係る事業リスクへの対策を行う、④適切な廃棄・処理に向けた検討の在り方、⑤買い取り期間終了後の事業継続がポイントです。適切な廃棄・処理については、業界としても環境配慮設計の基準づくりに向け検討会を立ち上げるなど準備を進めています。3つ目の「出力管理の高度化・自立化」は、①出力制御の高度化、②予測精度の向上―が鍵となります。
JPEAの亀田正明事務局長に太陽光発電の今後の展望についてうかがいました。
「短期的には、来年4月の電力小売り全面自由化による市場環境の変化を太陽光のビジネスチャンスとして捉えたい。太陽光を含む小売電力事業やデマンドレスポンスサービス、低圧託送とグリーン電力の提供など、電力自由化への対応を強化したいと思っています。中長期的には、事業者のインセンティブを維持しながら、最終的にグリッドパリティ(既存の電力とコストが同等かそれ以下になること)に到達させ、自立的成長に導くことが理想です。なにより大事なのが、できるだけ長く使っていただき、FIT 制度による買い取り期間終了後もCO2フリーの発電所として稼働することです。業界としても、発電所のロングライフ化の検討を始めたところです」
JPEAによると、制度支援なしに自立的に導入が進む設備(2031年度以降)を含む太陽光発電による化石燃料費の輸入コストの削減効果は、石油火力代替として2020年に1兆2574億円、2030年に1兆8255億円(図1)、2050年は2兆円超、2070年には3兆2000億円超が見込まれています。CO2削減効果は、2050年1億3000万トン超、2070年に2億トン超が見込まれ、CO2対策費として、2050年は8000億円超、2070年には1兆4000億円超が見込まれています。
「太陽光は化石燃料の輸入とCO2対策の費用を削減し、国民にとって便益になります(図2 )。有限で貴重な化石燃料の消費を減らし、将来世代にできるだけ多く残すことが大事です。100年先には、化石エネルギーに頼らなくても安全で豊かに暮らせる社会を支える持続可能なエネルギーシステムの柱になることが太陽光発電の究極の便益であり役割だと思っています」(亀田氏)
日本のエネルギー安定供給と地球への環境負荷低減の観点から、再生可能エネルギーの成長は今後ますます重要になるでしょう。太陽光発電が社会のさまざまな場面で根付いていくために私たちが長期的に育てていく意思が求められています。