誤解だらけのエネルギー・環境問題
我が国の全量固定価格買取制度はどう見直されるべきか
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
しかしこうした改正を行っても消費者負担増大には歯止めがかからず、2014年には再度EEG法改正を改正している。この時の改正の柱は、
① 年間導入目標設定
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- 太陽光250万kW、陸上風力250万kW、洋上風力は2020年まで650万kW、 2030年まで1500万kW、バイオマスは10万kWとそれぞれの電源の年間導入量に目標値を設定した。このように、法的義務を伴う導入目標を設定することで、エネの導入を保証するとともに、系統増強の進捗度合とあわせることができるようになること、そして、国民負担の見通しがつけられるようにしたのである。
② 負担の公平化
03年以降、国際競争力の確保などの観点から電力多消費産業の負担を軽減しており、しわ寄せで家庭や中小企業の負担が増大、その不公平感も問題を複雑にしている。電力多消費産業への免除が「特定産業への補助」に当たる可能性もあるとして、欧州委員会から欧州競争法抵触の懸念が示されてもいたため、減免対象の見直しはEEG改正の大きな柱であったが、大きな変更には成功しなかった。
これまで対象外であった自家消費型の太陽光発電に関しても再生可能エネルギー負担金の対象となる。2014年8月1日以前に稼動した既設自家発設備の自家消費については、全額減免を継続するものの、それ以降に稼働した新規自家発設備の自家消費分については部分的に賦課金を支払うことで決定。
電力卸市場の価格がマイナスになる(発電した電気を引き取ってもらうためにお金を払う状態)ネガティブプライスが6時間以上継続した場合には、再エネ事業者に対し、フィードインプレミアムのプレミアムが支払われないこととなった。これまでは市場で電気が余り負の価格になっても、自分の受け取るプレミアムとの相殺でわずかでも儲かるならば発電してしまうことを抑制できなかったが、この改正によってネガティブプライスが長時間継続する場合には、再エネの発電を抑制することが可能になった。
③ 市場直接販売の義務化
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- 2014年のEEG改正の大きな目的の一つが、再エネの市場への統合であった。FITはいわば究極の総括原価方式であり、市場における電力取引価格となんら関係がない。それを市場に統合していくことが求められており、2014年から500kW以上の発電設備については市場で直接販売すること、2017年についてはその義務付けが100kW以上の発電設備まで拡大されることが決定した。
しかし、これらの改正を行っても再エネ賦課金の上昇を抑制しきれるものではない。2016年に一般需要家が負担する再エネ促進のための賦課金は、15年の6.17ユーロセント/kWhから0.18ユーロセント上昇し、6.35ユーロセント/kWhとなる見込みであることが発表された注2) 。昨年賦課金が減少に転じたこともあり、さらなる上昇に対して国民の受ける負担感は相当強いと推測される。
【我が国のFITはどう見直されてきたか】
冒頭に示した通り、わが国のFITはドイツよりもさらに重症である。これまでにもすでに、
- ①
- 未稼働案件への対応
設備認定を取得し、接続契約を申し込んで買取価格を確定させておきながら、太陽光パネルの価格の低下を見込んで発電設備の発注等を行わない事業者への対処。設置場所並びに設備仕様が決定されていないものについて認定取り消しを行うなどの措置を決定。 - ②
- 分割案件の禁止
一つの太陽光発電設備であるにもかかわらず、50kW未満に分割することによって、①に示した認定失効を逃れたり、本来高圧電気設備が負担しなければならない連系コストを逃れたりしようとする事業者への対処。「分割案件」については、平成26 年度から、原則として認定しないこととなった。 - ③
- 出力抑制対策
「指定電気事業者」の認定を受けた一般電気事業者は、30日を超える再エネに対する無補償出力抑制を30日を超えても実施することを可能とし、さらに出力抑制対象を500kW以上から全設備に拡大した。また、無補償出力抑制を日単位(30日)から時間単位(360時間)に変更したことで、コントロールをしやすくした。 - ④
- 空押さえ防止
系統容量の空押さえを防止するため、再エネ発電事業者が、接続契約締結後1 か月以内に工事費負担金を支払わない、接続契約締結時に定めた供給開始予定日までに特段の理由なく供給を開始しないといったような場合には、接続契約解除を可能とした。
などの対応や修正を行っている。しかしこうした修正も「焼け石に水」でしかない。
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