「地中熱」の可能性を探る
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
地中熱の可能性は?
世界の地中熱ヒートポンプの設備容量は、2010年時点で3500万kWに達し、年間約400万kWの割合で伸びています。一方、日本では地中熱ヒートポンプシステムの設置件数は、2013年時点で累計1500件超(図2)になり、地域別では、北海道が426件と最も多く、東京都、岩手県、青森県、秋田県等で導入件数が多いのが特徴です。ここ数年の導入数は急速に伸びていますが、設備容量は2011年時点で約6万kWと欧米に比べると、かなり遅れている状況です。
地中熱ヒートポンプは、冷暖房、給湯、融雪などでさまざまな施設への導入が期待できます。東京スカイツリーや小田急電鉄以外の最近の導入事例として、東京国際空港の国際線ターミナルビルや東京大学理想の教育棟、東京駅前の商業施設KITTEなどがあります。プールの加温や農業用グリーンハウス、魚の養殖にも利用できます。
地中熱利用システムは、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出がほとんどないため、地球温暖化対策になります。また、東京や大阪など過密な都市では、夏のヒートアイランド現象が問題になっています。地中熱利用ヒートポンプのメリットは、冷暖房の排熱を外気に排出せず、地中に排熱するため、ヒートアイランド現象を抑制する効果があることです。夏は地中に放熱し、冬は地中から熱を採るため、年間を通して熱バランスが取れます。今後、土壌環境に配慮しながら、地中熱利用システムの一層の普及を図るべきでしょう。
平成26年度補正予算「再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策費補助金」では、地中熱など再生可能エネルギー熱などの利用設備を対象に、要件を満たす事業者(新規事業分)に対して、3分の1~2分の1の補助金が出されます。公募期間は平成27年3月20日~11月30日です。詳細は、新エネルギー導入促進協会のHPをご参照ください。http://www.nepc.or.jp/topics/2015/0320_3.html