「地中熱」の可能性を探る
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
先日、秋田県湯沢市で地熱に関する全国シンポジウムにファシリテーターとして登壇する機会がありました。地熱発電を導入した自治体の首長を招いて、「地熱発電を活かしたまちづくり」について発表および議論を行いました。ここでの議論は別の機会に書きますが、今回は「地中熱」について考えたいと思います。(文末に国による補助金の情報も掲載しています)
一般に「地熱」のカテゴリに入れられる「地中熱」。地熱は5000℃以上と言われる地球の内部から伝わる熱エネルギーのことですが、地中熱は地中200m以内の太陽熱由来のエネルギーです。地熱発電は活火山がある地域に適正地が多いですが、地中熱は天候に左右されず、昼夜を問わず日本中どこでも利用ができます。
地中の温度は、地下10m程度より深くなると、年間を通してほぼ一定で、15~18℃に保たれています。夏季の地中温度は気温より低く、冬季は気温より高くなります。日本では、冬と夏に地上と地中との間で10℃から15℃もの温度差が生じますが、この温度差を利用したのが地中熱利用システムです。(図1)
欧米では、石油ショック以降、石油の代替エネルギーとして地中熱ヒートポンプが注目され、1980年頃から導入が始まりました。2000年以降は地球温暖化対策の一つとして注目され、普及が進んでいます。それに比べると、日本での普及はこの数年増えてきたとは言え、世間の認知度はまだ低く、これからという状況です。
東京スカイツリータウンの地中熱地域冷暖房システム
日本でも地中熱が世間に注目されるきっかけになったのは、東京スカイツリータウンとその周辺(東京都墨田区、10.2ha)において、地中熱を利用した大規模な地中熱冷暖房システムが導入されたことでしょう。東京スカイツリータウン・ウエストヤード地下2階のメインプラントには、ターボ冷凍機2基、インバータターボ冷凍機1基、ヒーティングタワーヒートポンプ3基、水熱源ヒートポンプ1基の熱源設備と、巨大な水蓄熱槽(合計水力7000t)が導入されています。この他、地下鉄の躯体内や建物のトレンチ内などに総延長約3.1㎞の地域導管と、地中で採放熱を行う熱交換用チューブ(総延長1.2㎞)が敷設され、地域冷暖房システムを構成しています。